過去の米国の景気後退と株価の底値の歴史を学ぶ

3分で読める！ストラテジストのグローバル市場展望

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前川将吾

強まる米景気後退懸念

足元の金融市場では、米連邦準備理事会（FRB）の積極的な金融引き締めが米国の景気後退に繋がるとの懸念が強まっています。未だ堅調な労働市場を見る限り、早期の景気後退入りが“確実視”される状況には至りませんが、仮に景気後退が訪れた場合、その前後に株価がどう動くのかが気になる投資家も多いでしょう。そこで以下では、過去の米景気後退前後の株価の歴史を振り返ってみます。

景気後退と株価の底値の関係

図のS&P 500の底値【緑のマーカー】と景気後退期【網掛け部分】に注目してみます。第2次世界大戦後の歴史をみると、S&P 500は、①景気後退の開始前に底を付けたことがない一方、②2001年の例外を除けば、景気後退の終了前に底を付けていたことがわかります。以上を踏まえれば、投資家としては仮に景気後退が来た場合、その終了を待つというより、同期間中に付ける底値で投資を始めることが“理想” でしょう。

株価の底値はどう見極める?

残念ながら、株価の底値をピンポイントで見極めることはほぼ不可能ですが、株価が底値「圏」にあることを示唆する可能性がある材料としては「ISM製造業景況感指数の底打ち」【灰色のマーカー】が挙げられます。というのも、過去は景気後退入り後、平均6.7ヵ月でISM指数が底を打ち、S&P 500もそれにやや遅れた平均7.2ヵ月で底を打っているためです（注：景気後退の平均期間は10.3ヵ月）。なお、ISM指数が底を付けたかどうかを考える上では、同指数に先行しやすい項目別の「新規受注÷在庫」が上向いているかを参考にするのも一案です。

Guide to the Markets 2022年10-12月期版38ページ

【補足】2000年以前は、米景気後退期における米株式投資のリターンがプラスだったことも?

図の下段【紫色の棒】に注目してみましょう。これは、過去の景気後退開始月の月初から景気後退終了月の月末までの価格リターンをみたものです。第2次世界大戦後で12回分のデータがあります。
2000年以降の景気後退期はリターンがマイナスでしたが、2000年以前の景気後退期のリターンを見ると、後退初期の株価下落よりも、その後の後退終了までの戻りの方が大きかったケースもあり、5回は景気後退期のリターンがプラスになっていたことも確認できます。

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