米株高は短命? 予想PER頼みで、予想EPSは低下開始

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前川将吾

米国株式の下落と反発の原動力に注目

今年の米S&P 500の動きを振り返ると、6月16日に3,666の安値を付けた後、先週末には4,280まで反発し、高値からの下落幅の「半値戻し」を達成しました。この急落と反発について、予想EPS（1株利益、12ヵ月先）と予想株価収益率（PER）に分解して整理してみましょう（※出所はFactSet）。

年前半は、予想PER↓＞予想EPS↑で株安

年初から6月16日までの株価急落の局面では、予想EPSは約7％上昇していました。一方、予想PERが約28%低下し、予想EPSの上昇分を大きく上回ったことから株安となりました。このような動きは、米連邦準備理事会（FRB）の金融引き締め懸念やそれに伴う米国長期金利の急上昇がもたらしたバリュエーション調整であり、「逆金融相場」といえるでしょう。

足元は、予想PER↑＞予想EPS↓で株高

安値を付けた6月16日以降も同様に分解してみると、それまでと真逆の動きになっている点に要注目です。まず、予想EPSは6月半ばに頭打ちとなり、その後は低下しています。先週末時点で6月16日から1%超下げ、今や株安圧力に転じています。しかし、予想PERが同期間で約18%も上昇し、予想EPSの低下圧力を跳ね返したことから、株価は持ち直しています。この予想PERの上昇は、物価や金融引き締めへの懸念が和らぎ、米長期金利が6月中旬の3%台半ばから低下したことなどによるもので、「逆金融相場の巻き戻し」となっています。但し、当面は予想PERの上昇余地が限定的な一方、予想EPSの停滞傾向は続くため、株価の上値は重くなると考えます（→【補足】参照）。

Guide to the Markets 2022年7-9月期版56ページ

【補足】今後の予想EPSと予想PERの動きから考える米国株式の動向。足元の株高は短命に終わる?

まず、S&P 500の予想EPSは、今後も当面は停滞基調が続くと考えられます。足元の米国企業の決算発表は、総じてみれば「想定していたほど悪くない」という評価でしたが、米国や世界の景気後退入りが懸念されるほど実体経済の基調が冴えない状況下では、企業業績の見通しは暫く厳しい状況になっていくとみています。
一方、足元の株高の原動力である予想PERについては、一時は15倍台前半まで低下し割安感が意識されましたが、今や18.3倍（先週末時点）まで上昇し、過去10年平均の17.2倍や20年平均の15.7倍を上回っている点には注意が必要です。足元では米国のインフレのピークアウト観測が強まっているものの、未だ高い伸びであることを踏まえれば、FRBが早期に利上げ停止や利下げに前向きな姿勢を示す可能性は低く、当面は米長期金利の低下余地も限定的であることから、更なる「予想PER↑＞予想EPS↓→株高」の展開は長続きしないと考えます。

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