当面の米国景気の見通しと投資戦略は?

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当面の米国景気の見通しと投資戦略は?

前川将吾

米国景気の現状と見通しをいま一度点検

米国の経済指標をみると、金融引き締めの悪影響が徐々に広がっていることがわかります。①住宅市場は、住宅ローン金利の大幅上昇の影響などで冷え込んでいます。当面は追加利上げが意識されますが、過去は利上げが続く限り住宅ローン金利も高水準で推移し、住宅市場の逆風となり続けていた点に注意が必要です。続いて②製造業をみると、先週発表された8月のISM製造業景況感指数（52.8）は好不況の目安である50を上回っています。しかし、金融引き締めに伴う米ドル高が逆風となるほか、ISM指数に6ヵ月ほど先行する「新規受注指数/在庫指数」をみると、年末までに「50割れ」となる可能性が意識されます。また、③信用市場に関して直近の金融機関の貸出態度を確認すると、厳格化していることが示されています（→【補足】参照）。

上記の悪材料がある一方、先週の雇用統計の結果をみると、④労働市場は堅調さを維持しており、景気後退入りが“確実視”される状況ではありません（→【補足】参照）。

米景気の再点検を踏まえた投資戦略は?

以上4点を踏まえれば、景気後退に入るかどうかはともかく、パウエル米連邦準備理事会（FRB）議長がインフレ抑制に必要と主張した「潜在成長率を下回る低成長」が暫く続く可能性が高いと考えられます。従って投資戦略としては、機会損失や金利のリスクが大きい「現金や国債への“集中”投資」などの過度な守りに入るには至りませんが、これらの安全資産と低成長への耐性がある株式（高配当・ディフェンシブなど）への分散投資などが一案です。

Guide to the Markets 2022年7-9月期版23ページ

【補足】直近の信用市場と労働市場の注目指標を確認！

信用市場：左図の金融機関の貸出態度（青色、商工業ローン）は厳格化しています。直近値は22.2で、前回発表の0から上昇しています。コロナ禍という特殊な景気後退ではなく2001年3月からや2007年12月からの景気後退に注目すると、当時はFRBの利上げ後に金融機関の貸出態度がどんどん厳しくなり、景気後退が来ていたことがわかります。この歴史を踏まえれば、当該指標が一段と厳格化しないかを注視したいところです。
労働市場：右図のサームルール（緑色、当月を含む失業率の3ヵ月平均値と前月までの1年間の最低水準との差）に注目すると、過去は同指標が0.5を上回ると景気後退入りのサインとされています。先週末の雇用統計を踏まえた同指標の直近値は0.03で、目安の0.5と比べてまだ距離があることがわかります。

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