FRBの利下げの歴史に学ぶと、来年後半に利下げも?

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前川将吾

過去の米利下げの歴史を知る

投資家は、米連邦準備理事会（FRB）の利上げがいつまで続き、いつから利下げに転じるかを注視しています。この点を考えるにあたり、1974年以降の利下げサイクル開始時点の状況を確認します。①個人消費支出（PCE）物価指数（前年比）をみると、利下げサイクルの開始月は平均で4.7％の上昇で、1974、80、81年の大インフレ期を除く84年以降では2.6%でした。また、各利下げ開始前の実質政策金利がプラス（政策金利＞物価上昇率）であったこともわかります。次に、②非農業部門の雇用者数（前月比、3ヵ月移動平均値）をみると、利下げ開始月は平均で13.3万人の冴えない伸びでした。

来年後半に利下げの可能性も?

足元の金融市場の織り込みをみると、FRB高官のけん制にも関わらず、来年後半の利下げ観測が根強く残っています。そこで来年後半の経済見通し（Bloombergのエコノミスト予想集計値）を確認すると、①物価は来年7-9月期に2.8％、同10-12月期に2.4%まで鈍化し、来年後半の政策金利の織り込み（3％台後半）も下回り、実質政策金利はプラスになる（実質中立金利の観点からも必要に応じて緩和が検討できる）見込みとなります。次に②雇用は同7-9、10-12月期とも9万人増まで伸びが鈍化すると予想されています。過去の利下げの歴史と“現時点の”経済見通しを踏まえれば、市場の来年後半の利下げ観測に強い違和感はありません。

Guide to the Markets 2022年7-9月期版27ページ

【補足】仮に来年後半に利下げが始まるとしても、リスクオン“基調”が始まるとは限らない?

今年の夏場のように、今後も利下げ観測が強まる場面では株高期待が高まるかもしれません。しかし、過去は機動的な金融引き締めと緩和が景気拡大の長期化に繋がったこともあれば、利下げは手遅れで景気後退が訪れるケースもあった点には注意が必要です。この点を見極めるにあたっては、過去の利下げサイクル開始時の労働市場の強さに注目です。既に確認した通り、1974年以降の利下げ開始月の雇用の伸び（3ヵ月平均）は平均で13.3万人ですが、これを分解すると、（A）利下げ後に景気後退を回避できたケースの平均22.9万人に対して、（B）利下げは手遅れで景気後退が訪れているケースでは平均7.8万人でした。今回の利下げが期待される来年後半の雇用の伸びが10万人を若干下回る弱めの見通しであることを踏まえれば、現時点では「利下げ→景気後退は回避→リスクオン“基調”になる」と決めつけず、労働市場の動向を注視したいところです。

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