本レポートのトピック
- 米国の中間選挙の足元の情勢と選挙後の米国政治の見通しは?
- 過去の歴史から学ぶ!米国の中間選挙後の株式・債券市場の動向は?
米国の中間選挙の足元の情勢と選挙後の米国政治の見通しは?
以下図表の【左上】で現在の米国の議会構成を確認すると、トランプ米大統領(共和党)のもとで上下両院とも共和党が過半数の議席を確保しており、「トリプルレッド1」の状態にあることが分かります。
しかし【左下】を見ると、政権発足直後に50%を超えていた大統領支持率は足元で40%割れまで落ち込んでおり、共和党は選挙で苦戦を強いられるとの見方が強まっています。実際に第1次トランプ政権時を振り返ると、支持率が45%前後にとどまる中で臨んだ中間選挙や大統領選挙で、共和党は敗北しました。
加えて、【右上】で予測市場における今回の選挙結果の織り込み確率を見ると、「下院は明確に民主党が優位、上院も民主党が優勢」との予想になっており、「ねじれ1」への転換が見込まれています。
もっとも、歴史的には中間選挙後に「ねじれ」が生じることは珍しくありません。【右下】で第2次世界大戦後の中間選挙の結果を確認すると、過去は20回中15回が「ねじれ」となっているため、仮に今回の選挙で「ねじれ」が発生したとしても、さほど例外的な出来事ではないと言えるでしょう。
次に、仮に中間選挙後に「ねじれ」が発生した場合、今後の米国政治はどうなるのかを考えてみましょう。中間選挙を経て、これまでの「トリプルレッド」から「ねじれ」に変化した場合、①トランプ政権の政策推進力が落ちる可能性があるとはいえ、②政治や政策の変化を過度に懸念する必要はないかもしれません。
まず①に関しては、民主党が下院を制した場合、共和党が望む財政政策を実現することが難しくなり、債務上限問題や政府閉鎖を巡るリスクも高まります。加えて、民主党によるトランプ政権の監視が強まるでしょう。また、民主党が下院に加えて上院も制した場合は、トランプ大統領が望む人事に制約がかかることが見込まれます。
一方、②に関しては、仮に民主党が両院で勝利しても、規制、医療、気候などの大型法案の成立はハードルが高いため、「政策の大転換」のリスクはさほど大きくないと見られます。というのも、上院で法案を通すにはフィリバスター(議事妨害)を克服するための60票が必要であり、仮に両院を通過してもトランプ大統領の拒否権を覆すには上下両院で3分の2以上の票が必要となるためです。現時点では、民主党がこのような議席数を確保するほどの大勝利を収める可能性は低いと見られています。
Guide to the Markets 2026年10-12月期版で解説『米国:中間選挙と議会構成』
過去の歴史から学ぶ!米国の中間選挙後の株式・債券市場の動向は?
一部の投資家は、「中間選挙後にねじれが生じたら、政策推進力が落ちるので保有資産を売るべき」といった考えを持っているようです。しかし、以下図表の【左】と【右】で過去の中間選挙後の米国株式と米国投資適格債券のパフォーマンスを見ると、必ずしもこういった相場観が正しいとは言い切れないことが分かります。というのも、過去の中間選挙月以降(11月~翌年末)のパフォーマンスを確認すると、S&P 500の平均リターンは+20.3%で勝率も100%(→直近20回中20回プラス、うち15回は選挙後に「ねじれ」)、米国投資適格債券の平均リターンは+8.7%で勝率も92%(→データが取得可能な直近13回中12回プラス、うち11回は「ねじれ」)と、良好な結果になっていたためです。以上の歴史を踏まえれば、①仮に選挙で「ねじれ」状態になっても株安や債券安を過度に懸念する必要はない、②過去に見られたような中間選挙月以降の長期上昇相場の再来を想定する場合は、選挙前後に様子見するのではなく、投資を始めておく必要がある、といった見方ができるのではないでしょうか。
なお、中間選挙後に金融市場が堅調に推移する傾向がみられる理由としては、一般的には、①選挙「前」に市場の重荷となっていた政治の不透明感が選挙「後」に晴れる、②大統領が残りの任期後半に向けて景気・市場に配慮しやすくなる、といった解説がよく聞かれます。②に関して補足すると、「1期目の大統領」であれば次の大統領選の再選を意識した活動が期待されやすく、「2期目の大統領」の場合は再選のインセンティブこそないものの、自身のレガシー形成や自党の後継候補への支援を意識した政策を進めることが市場の堅調さに繋がるとの見方があります。
ただし注意したいのは、たしかにこのような解説や過去のデータは1つの参考になるものの、投資を考える上で最も注目すべき点はやはりファンダメンタルズであり、今後もその時々の経済動向を定点観測することが欠かせないという点です。