本レポートのトピック
- 過去の歴史から学ぶ!FRBの利上げ開始後の株式と債券のパフォーマンスは?
- 今回のFRBの利上げ局面は大丈夫?
- 2026年の米長期金利上昇の背景は?
- 長期金利の5%超えは米株にとって「危険サイン」?
過去の歴史から学ぶ!FRBの利上げ開始後の株式と債券のパフォーマンスは?
1990年以降で見ると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ期は今回を除いて7回ありました。この7回の局面について、以下図表の【左】では各利上げ開始月から12ヵ月後までのS&P 500のパフォーマンスを、【右】では同期間の米国投資適格債券のパフォーマンスを示しています。
このうち12ヵ月後までのリターンがマイナスになったケースは、株式・債券ともに【紫色】で示している2022年3月からの利上げ期の1回のみで、残り6回の局面では金融市場は堅調に推移していたことが分かります。2022年の利上げ局面がその他の6回と大きく異なった点としては、①利上げ開始月の米国のインフレ率が異常に高く、結果的にインフレを落ち着かせるための利上げが急激になったことが金融市場にショックを与えた点や、②利上げ開始の前月末時点の債券利回りが最も低く、金利上昇に伴う債券価格の下落に対するクッションが小さかった点などが挙げられます(→【左右の表】を参照)。
今回のFRBの利上げ局面は大丈夫?
続いて【左右の表の一番下】を見ると、①今回の利上げ開始月のインフレ率は3%台で2022年の8.5%と比べればかなり穏やか、②それ故に初回を含めた12ヵ月後までの利上げ幅の見通しも1%と限定的(→2022年は4.75%)、③利上げ開始の前月末時点の債券利回りは5.0%と2000年以降の利上げ期の中で最も高い、などの特徴が確認できます。これらのデータと過去の歴史を踏まえれば、今回の利上げ期は株式・債券ともに大きな波乱なく推移するかもしれません。
Guide to the Markets 2026年10-12月期版で解説『米国:FRBの利上げ開始後の株式と債券の値動き』
2026年の米長期金利上昇の背景は?
今年の米長期金利の主な上昇要因を確認すると、「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」のどちらの側面もあると言えるでしょう。まず以下図表の【左上】で【紺色】の米国10年国債利回りと【オレンジ色】の2027年12月時点の予想政策金利を見ると、2026年のイラン戦争以降、両者は連動して上昇しています。これは、2027年末にかけてのFRBの利上げ観測の高まりが、長期金利の上昇に波及してきたことを示唆しています。
続いてFRBの利上げ観測が高まった理由を探ると、【左下】で示している通り、景気の力強さ(→「良い金利上昇」の側面)と、イラン戦争後のエネルギー価格上昇に伴うインフレ懸念が浮かび上がってきます。
しかし、2026年における長期金利の上昇は景気や物価といった伝統的な要因に限らず、やや特殊な要因の影響も受けていると考えられます。例えば【右上】で、米国投資適格社債市場における主要なAIハイパースケーラー1の社債発行額を見ると、2026年は2025年の2倍以上に急増しており、2027年も更に増加する見込みになっています。データセンター建設を急ぐ信用力の高い巨大テック企業が長期マネーを大量に吸収し、米国債金利の上昇を促す構図は「逆クラウディングアウト2」と呼ばれており、今後も注視され続けるでしょう。
加えて、【右下】に表れている米国の財政状況の悪化も、「悪い金利上昇」の要因と捉えられています。足元では、連邦政府の総債務が2026年8月に40兆米ドルの大台を突破したことが話題となっており、今後は金利上昇によって利払い負担が一段と膨らむリスクなどが懸念されています。
Guide to the Markets 2026年10-12月期版で解説『米国:2026年の長期金利の主な上昇要因』
長期金利の5%超えは米株にとって「危険サイン」?
最近は一部の投資家が「5%」など長期金利の絶対水準の節目に注目する傾向がありますが、金利が株式市場に与える影響を考える際は、名目GDP成長率などとの比較感で考える必要があります。というのも、以下図表の【左】で過去の推移を見ると、【緑色】の米国名目GDP成長率が【紺色】で示している米国の長期金利(10年国債利回り)を上回っている期間は、【紫色】の米国企業の利益が上昇する傾向があったためです。
この関係は、長期金利の水準が足元の5%程度より高いか低いかに関わらず確認できます。この点を踏まえれば、仮に今後も長期金利が高止まりするとしても、名目GDP成長率がそれを上回る傾向が続くのであれば、株式投資への過度な懸念は不要と言えるかもしれません。
ここまでは「金利と企業業績の長期的な関係」を見てきましたが、【右】では「金利上昇が株価に与える短期的な影響」を確認できます。具体的に月次ベースのパフォーマンスを見ると、過去は「米長期金利の上昇→株安」という単純な構図ではなく、「緩やかな金利上昇ならば株高持続」、「稀に発生する急激な金利上昇ならば一旦株安」という傾向があったことが見て取れます。
実際に【赤い棒】で米国10年国債利回りが上昇した月のS&P 500の平均リターンに注目すると、①0.5%以上の大幅な金利上昇が起きた月は約-1.0%と下落している一方、②0.5%未満の金利上昇であれば+1.0%超と堅調だったことが分かります。なお、直近30年間で米国10年国債利回りが上昇した月の割合は52.3%と約半分であり、更にその内訳を見ると、「緩やかな金利上昇」の割合が48.4%と大半を占める一方、「大幅な金利上昇」の割合は僅か3.9%にすぎないため、株安をもたらすような過度な金利上昇はそう頻繁に起きなかったと言えます。
このような過去のデータを参考にすれば、「あくまで金利は株価に影響を与える1つの要因にすぎない」と捉え、企業業績などその他の要因にもしっかりと目を向けた上で相場観や投資戦略を持つことが重要と言えるでしょう。