本レポートのトピック
- 2026年の相場の勝ち組と負け組は?どのような特徴がある?
- 不安定な中東情勢で今後の主要国・地域の経済はどうなる?
- 米国の堅調な個人消費は物価高で今後失速する?
- FRBの金融政策は引き締め的?それとも緩和的?
- AI投資は本当に持続可能?
2026年の相場の勝ち組と負け組は?どのような特徴がある?
2026年はイラン戦争やそれに伴う物価と金利の上昇、AI脅威論、プライベートクレジットに対する懸念など、様々なリスク要因が取り沙汰される中でも、相場の基調はリスクオンでした。実際に以下図表の【左】で年初来の各資産のリターンランキングを見ると、①債券やゴールドなどの安全資産よりも株式が優位、②株式の中では情報技術セクター、アジア(除く日本)、新興国、日本など景気敏感なセクターや国、地政学リスクや物価高リスクに対応できるエネルギーセクターが上位にランクイン、などの傾向があったことが分かります。
次に、2026年の相場の特徴について確認してみましょう。以下図表の【右上】と【右下】のデータを見る限り、2026年は「業績相場」だったと言えるでしょう。まず、【右上】で米国の金利と株式の動向を確認すると、長期金利(10年国債利回り)の上昇が止まらず、投資家が過剰に警戒していた5%の大台を超えても株価は堅調さを維持しており、「金利高&株高」の構図になっていることが分かります。
続いて株高のドライバーを【右下】で確認すると、今年は予想1株利益(EPS)が急速に上昇する一方で、予想株価収益率(PER)は切り下がり、割高感が和らいでいることから、「健全な株高だった」と捉えることが可能でしょう。振り返れば2026年初の時点では、S&P 500の予想PERが20倍を超えており、バリュエーションが高かったため、一部の市場参加者は「今年は株安になる」と懸念していました。しかし少なくとも現時点では、「高バリュエーション=株高終了のサイン」という整理は不適切だったことになります。今後の株価動向を占ううえで本質的に重要なのは企業業績見通しの変化であり、引き続きそこに注目すべきだと考えています。
Guide to the Markets 2026年10-12月期版で解説『金融市場の振り返り:グローバル金融市場の動向』
不安定な中東情勢で今後の主要国・地域の経済はどうなる?
2026年2月末に勃発したイラン戦争は、一時的な落ち着きを見せた後、再び緊迫化しました。そこにロシアとウクライナの攻撃の応酬も重なった結果、依然として原油や液化天然ガス(LNG)、石油化学製品、肥料、食料品など幅広い分野の供給に支障が生じています。
とはいえ、以下図表の【左上】で世界の供給網の混乱度合いを示す「グローバル・サプライチェーン圧力指数」を見ると、現在の供給制約は2020年から2022年のコロナ禍やロシア・ウクライナ戦争直後、今年春の局面ほど深刻ではないことが見て取れます。もちろん、足元の地政学リスクの悪影響は軽視できず、供給網が今後正常化に向かうかは注視する必要がありますが、【左下】でエコノミストによる2026年と2027年の日米欧中の成長率予測を見ると、いずれも潜在成長率並みの堅調な見通しが維持されています。背景には、物価高や金利上昇といった逆風がある中でも、活発なAI関連投資や緩和的な財政政策、健全な民間部門のバランスシートなどが世界経済を下支えしていることがあると考えられます。
【左下】が「エコノミスト視点」の経済見通しであるのに対して、【右上】では「企業視点」の景況感、【右下】では「アナリスト視点」の企業業績見通しが確認できます。
まず【右上】の日米欧中の総合PMI1(購買担当者景気指数)の動向を見ると、中東情勢の先行き不透明感が残っているにも関わらず、2026年9月時点ではいずれも好不況の分かれ目である50を超えて概ね改善基調が続いている点は安心材料です。2025年の関税ショックと同様に、2026年に発生したイラン戦争も一時的な景況感の悪化に止まることを期待したいところです。
続いて【右下】の企業業績見通しを見てみると、こちらも世界的に右肩上がりの基調が続いています。
これらのファンダメンタルズの強さが崩れないうちは、日々のニュースのヘッドラインで一喜一憂しつつも、上記で確認した「業績相場」が当面続く可能性があります。
Guide to the Markets 2026年10-12月期版で解説『世界のファンダメンタルズ:経済見通しと企業業績見通し』
米国の堅調な個人消費は物価高で今後失速する?
以下図表の【左上】で米国家計の所得・消費・資産の動向を確認すると、【灰色】の実質可処分所得の伸び(前年比)が鈍化傾向にある一方で、【青色】の実質消費支出の伸び(前年比)は底堅く推移していることが分かります。この背景には、株高などによる純資産の増加を受けて、高所得層の消費が旺盛だったことなどがあります(→これは、【緑色】で示している可処分所得に対する純資産の比率が上昇していることからも確認できます)。しかし、資産効果のみに頼る構図は持続性の面で不安が残るため、今後は実質可処分所得が回復するかを見極める必要があるでしょう。そのカギを握る要因としては、①今年急上昇したインフレが落ち着くか、②賃金上昇率の鈍化傾向に歯止めがかかるか、の2点などが挙げられますが、現時点ではいずれも先行きは悪くないとみています。
FRBの金融政策は引き締め的?それとも緩和的?
2026年初の時点で、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が中立金利に向けて年内2回の利下げを実施すると予想していましたが、蓋を開けてみればFRBは9月に利上げを開始しました。この利上げを受け、投資家の間では「足元の米国金利が引き締め的か緩和的か」を巡って様々な意見が飛び交っていますが、この点を考える上では、以下図表の【左下】が参考になるでしょう。同チャートを見ると、現在の金利水準は【紫色】で示している住宅投資にとっては既に十分抑制的である一方、AI関連をはじめとする【紺色】の設備投資にとっては緩和的であることが読み取れます。これは、足元の米国の消費動向が高所得層と中・低所得層で二極化しているのと同様に、投資の世界でも住宅とAIで二極化が進行していることを表しています。なお、このような構図は今後も当面は変わらないとの見方が優勢です。高止まりする住宅ローン金利が住宅販売の低迷継続に繋がる一方、仮に追加で数回の利上げがあっても、旺盛なAI需要を背景にデータセンター投資がすぐに落ち込む可能性は低い、という見立てになっています。
AI投資は本当に持続可能?
以下図表の【右上】で米国の主要なAIハイパースケーラー2による設備投資額の見通しを確認すると、AI投資がピークアウトするとの見方は時期尚早と言えるかもしれません。むしろ、毎四半期の決算を経る度にアナリストの予想集計値が上方修正され続けているのが実態です。
加えて、直近のハイパースケーラーの決算でクラウド関連の売上高や利益率の力強さが確認されたことも投資家の安心材料となっています。投資の収益化が見込まれた結果、【右下】で示している通り、【黄緑色】の営業キャッシュフローや【灰色】の利益率は今後も右肩上がりで推移すると予想されています。これを踏まえれば、少なくとも現時点では、AI投資の持続可能性を過度に疑う必要はないかもしれません。
なお、一時はAI脅威論を背景に「先端AI開発が減速する」との見方が強まりました。しかし、米中企業の競争は激しく、両国政府も厳しい規制を導入する姿勢は見せていないため、この点を巡る過度な懸念はひとまず収まっています。