本レポートのトピック
- 「米国金利上昇なら株安」は本当?
- 「米国金利上昇なら成長株より割安株優位」は本当?
- 米国長期金利が5%などの節目を超えて上昇すると、株高基調が終わる?
- 供給ショックを背景とする米国長期金利の上昇には引き続き注意が必要?
「米国金利上昇なら株安」は本当?
過去のデータに基づけば、「米長期金利の上昇なら株安」という単純な構図ではなく、「緩やかな金利上昇ならば株高持続」、「稀に発生する急激な金利上昇ならば一旦株安」となる傾向があります。
実際に以下図表の【左】で米国10年国債利回りが上昇した月のS&P 500の平均リターンを見ると、①0.5%以上の大幅な金利上昇が起きた月はS&P 500の平均リターンが-0.9%と下落しているものの、②0.5%未満の金利上昇であれば、同リターンが+1%超と堅調だったことが分かります。なお、1995年以降で米国の金利が上昇した月の割合は約50%と半分であり、更にその内訳を見ると、「緩やかな金利上昇」の割合が47.4%と大半を占める一方、「大幅な金利上昇」の割合は僅か3.7%に過ぎないため、株安をもたらすような過度な金利上昇はそう頻繁に起きないと言えます。
「米国金利上昇なら成長株より割安株優位」は本当?
「米国の長期金利が上昇すると割安株式(バリュー株式)が買われ、成長株式(グロース株式)は売られる」という話はまるで自明のように語られることが多いですが、以下図表の【右】で過去の金利とバリューvs.グロースの相対リターンの関係を見ると、両者はほぼ無相関であることが確認できます。
このような過去のデータを参考にすれば、「あくまで金利は株価に影響を与える1つの要因に過ぎない」と捉え、企業業績などその他の要因にもしっかりと目を向けた上で相場観や投資戦略を持つことが重要と言えるでしょう。
Guide to the Markets 2026年7-9月期版で解説『金利の変動と株式のリターンの関係』
米国長期金利が5%などの節目を超えて上昇すると、株高基調が終わる?
今年の米国経済は堅調な成長をみせる可能性があるため、年後半に「経済の体温計」である長期金利が高止まりないし上昇するリスクは意識しておきたいところです。
とはいえ、金利に上昇圧力がかかったとしても、その原因が経済の強さであれば、「一時的な株安」は生じても「株安基調」にはならないと考えています。実際に、以下図表で示している過去のデータを見ると、米国の長期金利の上昇局面を表す【灰色の網掛け部分】では、【紫色】のISM製造業景況感指数1とともに【緑色】のS&P 500が上昇基調を辿る傾向がありました。なお、この傾向は、1990年代半ばや同年代後半、2000年代半ばに金利が節目の5%などを超えて上昇していた局面にも当てはまっているため、仮に年後半に金利がこのような目安を超えて上昇したとしても、過度に株安を懸念する必要はないかもしれません。
供給ショックを背景とする米国長期金利の上昇には引き続き注意が必要?
上記では「ディマンドプル型」の長期金利上昇(→需要サイドに起因する金利上昇)のケースを確認しましたが、「供給ショック型」の金利上昇の場合は少なくとも一時的に株式に強い逆風が吹く可能性がある点には注意が必要です。
後者の一例として以下図表の【黒枠の期間】を確認すると、2022年当時はコロナ禍に伴う供給網混乱とロシア・ウクライナ戦争が重なったことで、インフレ率と長期金利が急上昇する一方、景気減速でISM製造業景況感指数は低下していたことが分かります。
このような状況はまさに株式にとって「ダブルパンチ」の状況であるため、1年未満とはいえ株価が大きく下落しました。今年はイラン戦争が短期間で最悪期を脱したこともあり、現時点では「2022年のような持続的かつ深刻な供給ショック」ではなく「ディマンドプル型の金利上昇リスク」を意識していますが、当然ながら地政学リスクの動向には常に注意を払う必要があるでしょう。