本レポートのトピック
- 米国におけるインフレの現状と今後の見通しは?
- 今後はチップフレーションによる「コア財インフレの加速」に注意?
- ウォーシュ新体制の米連邦準備制度理事会(FRB)はどう動く?
- 欧州中央銀行(ECB)の追加利上げの見通しは?
- 日銀は「ビハインド・ザ・カーブ」で利上げ加速?
米国におけるインフレの現状と今後の見通しは?
以下図表の【左】で今年の米国の消費者物価指数(CPI、前年比)の動向を見ると、年初の2%台前半から5月の4%台まで急上昇したことが分かります。とはいえ、7月14日に発表された6月のCPI(前年比) は3.5%まで一旦鈍化したことに加えて、今後のエコノミストのコンセンサス予想(四半期ベース、中央値)を見ると、2022年のような6~9%程度の大インフレがこれから起きるとの見通しにはなっておらず、来年の4-6月期には2%台前半まで急低下することが見込まれています。
このように現時点では大インフレには至らないと見られている背景としては、①足元のインフレ加速の主因である【青色】のエネルギー価格は中東情勢の波乱がなければ落ち着いていく、②以下図表の【右上】と【右下】で示している通り家賃や賃金の上昇率が加速する兆しが見られていないことを踏まえれば、CPIへの寄与度が大きく粘着性も高いサービス価格(→【左】の【オレンジ色と灰色】)は安定的に推移する、③中長期のインフレ期待は落ち着いており、物価上昇の「深刻な二次的影響」が生じるサインも見当たらない、などが挙げられるでしょう。
今後はチップフレーションによる「コア財インフレの加速」に注意?
一部の投資家は、AI関連需要による半導体メモリーなどの価格上昇圧力(チップフレーション)を受け、【左】の【紫色】のコア財価格が急上昇するリスクを警戒しているようです。
しかしコア財に関しては、AIブームによる押し上げ要因だけではなく、昨年発動したトランプ関税の影響一巡などの鈍化要因も存在するほか、CPIに占めるウェイトも相対的に小さいため、少なくとも現段階では「コア財がインフレ全体を過度に押し上げるリスク」は限定的と考えられます。
Guide to the Markets 2026年7-9月期版で解説『米国:インフレ率と先行指標』
ウォーシュ新体制の米連邦準備制度理事会(FRB)はどう動く?
以下の図表は、日米欧の政策金利とその見通しについて示しています。
下記はいずれも執筆時点(2026年7月21日時点)の見通しであり、1回の利上げ・利下げ幅は0.25%を想定しています。
FRBの金融政策について、金融市場では年初の時点で約2回の年内利下げが予想されていましたが、足元では一転して年末までに1回強の利上げが織り込まれています。ただし、上記で確認した通り、現時点では米国のインフレ加速が一時的である可能性を考慮すれば、FRBは必ずしも急いで年内に利上げをする必要はないと考えています。
なお、今年6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者のドットチャート(→全19名のうちウォーシュFRB議長を除く18名が提出)を見ると、中央値ベースでは年内1回の利上げが示唆されていますが、投票権を持つ12名に限れば、その過半数のメンバーは利上げを予想していないとみています。FRBがより強い確信をもって利上げに踏み切るには、労働市場が想定以上に強くなり、高インフレの長期化を示唆するデータが出てくる必要があると考えています。
欧州中央銀行(ECB)の追加利上げの見通しは?
足元の市場では、今年6月の利上げに続いて、秋以降に年内1~2回の追加利上げが織り込まれています。
一時はECBのインフレに対する強い警戒感を反映し、年末までに2回強の追加利上げ(→6月に実施済みの1回との合計で年内3回強の利上げ)が織り込まれていましたが、①エネルギー価格の落ち着き、②未だ弱いユーロ圏の企業景況感、③現時点では「賃金・物価スパイラル」の兆候なし、などの材料もあり、年内の利上げ織り込みは一時期と比べて縮小しました。
日銀は「ビハインド・ザ・カーブ」で利上げ加速?
欧米中銀の金融政策の市場織り込みがなかなか定まらない中、日銀については年初も足元も変わらず今年2回の利上げ(→6月に1回実施済み、年末までに追加で1回の利上げ)が見込まれています。
市場参加者は日銀の「ビハインド・ザ・カーブ1」を懸念し始めており、一部の日銀審議委員は今後の状況次第では利上げペースの加速が必要と考えているようですが、高市政権が利上げを好ましく思っていないとの見方が根強いため、「緩やかなペースでの利上げ継続」が引き続きメインシナリオとなっています。
具体的な次回の利上げ時期としては今年の10月や12月が有力視されていますが、投資家にとって本質的に重要なのは、次回の利上げタイミングよりもターミナルレート2の水準でしょう。この点については、1年前の1%→6ヵ月前の1%台半ば→3ヵ月前の2%弱→足元の2%と切り上がり続けていますが、中長期的な日本経済の実力やインフレ見通しを意識してか、徐々に上昇ペースが鈍ってきた点はおさえておきたいところです。