Guide to the Marketsで解説!イラン戦争終結後の投資戦略は?
本レポートのトピック
- 世界の景気や業績のサイクルの「基調」を見通すカギになる経済指標とは?
- 足元のグローバル製造業PMIの動向と今後の見通しは?
- 景気及び業績サイクルの「基調」が上向きの局面で、金利と株価はどう動く?
- グローバル製造業PMIの上昇局面における投資戦略は?
- アクティブ運用の重要性が高まっている?
- 国やセクター、スタイルに止まらず、個別銘柄ベースの選別も重要?
世界の景気や業績のサイクルの「基調」を見通すカギになる経済指標とは?
イラン戦争については、依然予断を許さない状況が続いているものの、仮にそれらによる悪影響が限定的な場合、今後の世界の景気サイクルや業績サイクルはどう動くかについて考えてみましょう。
世界の景気や業績のサイクルの「基調」を見通すカギになる経済指標の一つとして、グローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)が挙げられます。PMIとは、企業の購買担当者に新規受注や生産、雇用の状況などを毎月聞き取り景況感を指数化した景気指標であり、製造業と非製造業に分けて発表されますが、特に製造業PMIは景気動向の変化をいち早く示す指標として市場関係者から注目されています。
以下の図表の【左上】と【左下】を見ると、【緑色】の世界の実質GDPや【黄緑色】の世界株式の予想1株利益(EPS)の成長率と【紫色】のグローバル製造業PMIが密接に連動する傾向があることが分かります。
これらの点を踏まえれば、今後の世界の景気や業績サイクルを見通すためには、グローバル製造業PMIの動向を分析することが非常に重要と言えるでしょう。
足元のグローバル製造業PMIの動向と今後の見通しは?
昨年来のグローバル製造業PMIの推移を見ると、トランプ関税ショックなどの強い逆風があったにも関わらず上昇基調を続けており、今年のイラン戦争後もさほど悪化していないことが分かります。この上昇基調が今後も続くかどうかを分析する上では、①昨年の関税ショックと同様に、今回の戦争の悪影響も限定的かを暫く見極める必要があるのは当然として、②あわせてグローバル製造業PMIに6ヵ月程度先行して動く傾向があるOECD景気先行指数のモメンタム(前月差)にも注目しておきたいところです。ちなみに②のグローバル製造業PMIの先行指標に関しては、【右】の【青い点線】でその動向を確認してみると、現在もしっかり右肩上がりを続けています。これは、今後のグローバル製造業PMIの上昇継続、ひいてはそれと連動する世界の景気サイクルや業績サイクルの上昇継続が期待できる好材料と捉えられるかもしれません。
Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『世界の景気サイクルの先行指標』
景気及び業績サイクルの「基調」が上向きの局面で、金利と株価はどう動く?
仮にイラン戦争の悪影響が限定的でグローバル製造業PMIの上昇基調が続く場合、金融市場は米長期金利高止まりと世界株高が併存する「業績相場」になる可能性があります。
このように考える理由を確認するために、まずは以下の図表の【左】で【紫色】のグローバル製造業PMI(3ヵ月移動平均値)と【紺色】の米国10年国債利回りの関係性を見てみると、過去は【赤色】で示しているグローバル製造業PMIの上昇局面において、「経済の体温計」である米国10年国債利回りは上昇ないし横ばいで推移する傾向があったことが分かります。
次に、【右】でグローバル製造業PMIと日米株価の関係を確認すると、【赤色】で示している過去のグローバル製造業PMIの上昇期は基本的に日米株式のリスクオン相場が終わらなかったことが見て取れます。この株高基調の背景としては、グローバル製造業PMIの上昇期は連動して企業の利益成長率も加速していることが大きく影響していると考えられます。
Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『世界の景気サイクルと金利・株式の動向』
グローバル製造業PMIの上昇局面における投資戦略は?
以下の図表は、グローバル製造業PMIの上昇局面における1ヵ月間のリターンの平均値を示しています。
グローバル製造業PMIが上昇基調だった局面では、①債券やゴールドなどの「安全資産」よりも株式、②株式の中ではグロースもしくはバリューといったスタイルで考えるよりも、シクリカルセクターやシクリカル性が高い国(→日本やアジアなどの新興国)、③債券の中では高利回りの米国ハイ・イールド債券などを選好する投資戦略が有望と言えるかもしれません。
Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『世界の景気サイクルと各資産のリターン』
アクティブ運用の重要性が高まっている?
足元の日本の投信業界では、世界株式指数(MSCI オール・カントリー・ワールド指数、以下ACWI)に連動する低コストのインデックス型ファンドなどが人気を集めています。しかし最近は、戦争などの地政学イベントやAIによるあらゆるビジネスの変革など構造的な変化が続出しているため、今後はこういった環境の移り変わりに対応できるか否かで、各企業の「勝ち組」と「負け組」の分類がより明確になる可能性が高まっています。このような点を踏まえれば、これからはアクティブ運用の重要性がより増していくと言えるのではないでしょうか。
なお、足元のアクティブ運用の有用性については、2026年1-3月期のACWIのパフォーマンスデータを見れば一目瞭然です。はじめに国やセクターの選別投資の重要性については、左2つの棒グラフで示しているACWIの構成国とセクターのリターンのレンジを見ることで理解できます。具体的には、年初来のACWIのリターンは【オレンジ色のマーカー】で示している通り-3.1%ですが、ACWI構成国(47ヵ国)のリターンのレンジは約63%に及び(→最上位はノルウェーの+31.7%で最下位はインドネシアの-31.2%)、11セクターのリターンのレンジも約45%と幅広くなっています(→最上位はエネルギーの+33.8%で最下位は一般消費財の-10.8%)。
国やセクター、スタイルに止まらず、個別銘柄ベースの選別も重要?
上記のデータを踏まえると、「国やセクターのオーバーウェイトとアンダーウェイト」(=資産配分の「味付け」)を上手くコントロールすることの必要性が理解できますが、更に深堀すると、「個別銘柄の選別投資」の重要性にも気付かされます。というのも、図中で各セクターに含まれるACWI構成銘柄のリターンのレンジを見ると、最低でも75%とかなり幅広いことが分かります。例えば左から3番目の棒グラフでACWIの情報技術セクターに注目すると、年初来のリターンは【オレンジ色のマーカー】の通り-6.7%でしたが、同じ情報技術セクター内でも最上位の+115.8%から最下位の-57.9%まで、約174%の格差があることが分かります。また、一口にグロース株式やバリュー株式といっても、やはり個別銘柄のパフォーマンスのばらつきは大きくなっています。
足元のように世界の政治・軍事・経済・テクノロジーが大きく変化している局面において、このようにパフォーマンス格差がかなり大きいという事実を考慮すれば、これから世界株式に投資をする際は、国やセクター、スタイルに止まらず個別銘柄にまで目を向けて、「勝ち組」と「負け組」を世界視点で選別できるアクティブファンドを活用する意義が高まっていると考えられます。