Guide to the Marketsで解説!プライベートクレジット発の金融危機が近い?
本レポートのトピック
- プライベートクレジットへの不信感が募る中、米国の社債市場の動向は?
- プライベートクレジット発のシステミックリスクは間近?
プライベートクレジットへの不信感が募る中、米国の社債市場の動向は?
昨年以降プライベートクレジットへの懸念が高まる中、ノンバンク融資を手掛ける投資会社の「ビジネス・ディベロップメント・カンパニー(BDC 1)」は上場している銘柄の株価が軒並み低迷しており、非上場のBDCでも個人投資家による解約請求が加速している点が問題視されています。
実際に以下の図表の【左上】で上場BDCのパフォーマンス(【灰色】)を見ると、「質の低い貸し出し」に対する懸念などを背景に2025年年初から何度か大幅下落を経験していることが確認できます。中でも、①米自動車関連企業が相次いで破綻した2025年秋や、②BDCによるソフトウェア企業への融資の多さが警戒された2026年年初の下げが目立ちます。
ただし、一口に信用市場といっても様々な金融商品があり、それらのパフォーマンスが異なる点はおさえておきたいところです。ここで改めて【左上】を見ると、BDCの軟調さとは対照的に、【青色】で示している米国の投資適格社債や【紫色】で示しているハイ・イールド債券のパフォーマンスは底堅いことが分かります。
そもそもプライベートクレジットと社債の違いは数多くありますが、足元ではエクスポージャーの違いが両資産のパフォーマンス格差の一因となっています。例えば【左下】を見ると、AIによりビジネスモデルが不安視されているソフトウェアセクターへのエクスポージャーは、BDCが約20%と高水準であるのに対して社債は2~3%程度と限定的である一方、イラン戦争が追い風となったエネルギーセクターに対するエクスポージャーは、BDCがほぼ皆無なのとは対照的に米国ハイ・イールド債券は10%超と高水準です。
1 BDCは、主に未上場の中堅・中小企業などに融資や投資を行うクローズドエンド型の投資法人のことを指します。
プライベートクレジット発のシステミックリスクは間近?
一部では、プライベートクレジット発のリスクが米国の金融市場全体や経済全体へのショックに繋がる可能性が懸念されていますが、次の3つの理由から過度に懸念するのは時期尚早だと考えています。
まず第1に、少なくとも現時点では、プライベートクレジット市場全体で深刻な破綻リスクが高まっているというより、個別の問題として捉えられている点をおさえておきたいところです。また、仮に質の悪い貸し出しが想定以上に広く蔓延していたとしても、その貸出先の本格的なデフォルトは、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めやそれによる本格的な景気悪化などが起きるまでは続出しない可能性があります。
第2に、銀行セクターへの影響が限定的であると考えられる点も認識すべきでしょう。たしかに近年は銀行によるノンバンク向けの貸し出しが増加していたとはいえ、全体に占めるノンバンク向けエクスポージャーの比率は現状大きくないほか、リーマン前と比べて銀行が損失吸収力の高い自己資本を多く備えていることも重要です。
第3に、仮に信用市場の一部で問題が発生したとしても、以下の図表の【右上】と【右下】で示している通り、米国の家計全体や企業全体でみた債務状況が健全である(→債務対GDP比や債務返済比率が低い)という点を踏まえれば、それが防波堤となり、金融市場全体や経済全体への悪影響が限定的になる可能性があることも安心材料でしょう。