Guide to the Marketsで解説!AIバブルや「SaaSの死」は大丈夫?
本レポートのトピック
- AIバブルは大丈夫?
- 「SaaSの死」が懸念される中でも、米国IT株式に投資妙味はある?
- そもそも米国株式は「全部売り」ではない?
- 米国外に目を向けると、アジア株式や日本株式が有望?
AIバブルは大丈夫?
以下の図表の【左上】を見ると、昨年来は【灰色】の世界(除く米国)株式のパフォーマンスが堅調な一方、【緑色】のS&P 500のパフォーマンスは相対的に振るわず、特に2026年1-3月期は【紫色】の情報技術(IT)セクターの弱さが目立ちました。しかし、少なくとも現時点では、この点について過度な懸念は不要と考えています。というのも、【左下】の予想1株利益(EPS、アナリスト予想集計値、12ヵ月先)を見ると、S&P 500の業績見通しは今年入り後も右肩上がりの基調を維持しており、中でもITセクターの伸びは非常に力強いことが確認できるためです。
このように業績見通しが堅調な割に株価の低迷が続いた結果、【右】で示している通り、S&P 500とS&P 500 ITセクターの予想株価収益率(PER)はともに大きく低下し、割高感が和らいだ点は安心材料でしょう。
もちろん、両資産ともまだ「割安」と言える水準には至っていないものの、昨年多くの投資家が警戒していた「AIバブル」という過度な懸念はかなり落ちついたのではないでしょうか。なぜなら、改めてS&P 500 ITセクターの予想PERの推移を見ると、①かつての「ITバブル期」は50倍を超えていた一方、2026年3月末時点では20倍近くまで下がっていることに加え、②S&P 500のITセクターとS&P 500全体の「予想PER格差(【オレンジ色】)」もITバブル期の25倍超に対して1.2倍程度まで縮小しており、ハイテク株式の相対的な過熱感は解消されているためです。
Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『米国株式:情報技術セクター①』
「SaaSの死」が懸念される中でも、米国IT株式に投資妙味はある?
以下の図表の【左上】と【左下】では、S&P 500のITセクターを6つの産業に分解し、それぞれの昨年来から2026年3月末時点までのトータルリターンと予想EPSを示していますが、ここから読み取れるポイントは主に2つあります。
まず第1は、【左上】で確認できる通り、ITセクター全ての産業のリターンがマイナスになっているわけではないという点です。具体的に見てみると、「SaaSの死」への懸念を背景にソフトウェアと情報技術サービスは大幅に下落している一方、その懸念の原因となっているAIの急成長がむしろ追い風となるハードウェア関連などはリターンがプラスになっていることが分かります。そもそもSaaSとは「Software as a Service」の略で、クラウド経由で提供されるソフトウェアサービスを指し、「SaaSの死」はAIの進化により既存のソフトウェアのビジネスモデルが揺らぐという懸念を指します。
そして第2のポイントは、左下の予想EPS(アナリスト予想集計値、12ヵ月先)の変化で示している通り、ITセクターの各産業のファンダメンタルズが概ね堅調と捉えられている点です。中身を詳しく見ると、投資家の懸念が特に強いソフトウェア株式の予想EPSが昨年も今年も上昇し続けているのは意外かもしれませんが、業績見通しを立てているアナリストからすれば、「早期のAI代替懸念による株価急落はやや過剰」と考えられている可能性がある点は認識しておきたいところです。とはいえ、長期的にはAIが更なる性能向上を遂げていくのは間違いなさそうであり、その過程ではAIにビジネスを奪われてしまうハイテク企業が増加する一方、AIを活用することにより勝ち組になるソフトウェア企業なども出てくるでしょう。
以上を踏まえれば、今後はSaaS系も含めてハイテク企業を一緒くたに捉えたり、過度に楽観的・悲観的になったりするのではなく、個別のファンダメンタルズをしっかり見極めながら、選別投資の姿勢で臨むことが重要になっていくと考えます。
そもそも米国株式は「全部売り」ではない?
以下の図表の【右上】で2026年1-3月期のS&P 500のセクター別トータルリターンを見ると、S&P 500全体がマイナスになる中でも過半数のセクターは上昇しており、「全部売り」というよりは「循環物色」の様相を呈していたことが分かります。なお、上昇したセクターや銘柄の一部は「HALO」株として注目されています。HALOとはHeavy Asset Low Obsolescenceの略称であり、価値の高い実物資産を持つためAIの急速な進化の犠牲者になりにくい(=AIに製品やサービスを代替されにくい)特徴を持つことを指しています。
このようにハイテク株式が軟調な局面でも、その他のセクターへの期待により米国株式が総崩れにならなかった背景としては、イラン戦争後も「巨大テック以外の米企業」への業績期待が高いことが挙げられるでしょう。実際に【右下】で今年のマグニフィセント7(M7 1)とM7を除くS&P 500(=S&P 493)の予想EPSの伸びを見ると、①引き続き急拡大するAIビジネスなどを背景にM7が20%超の高成長を維持することが期待される一方、②S&P 493も14%まで増益率が加速することが見込まれている点が重要です。
1 M7はアップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、テスラの7社を示しています。本資料に記載の銘柄はあくまで例示目的であり、個別銘柄の推奨を目的として示したものではありません。弊社若しくは弊社グループ会社又はそれらの従業員は本資料に記載されている銘柄の有価証券を保有している場合があります。
Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『米国:情報技術セクター②』
米国外に目を向けると、アジア株式や日本株式が有望?
アジア(除く日本)株式や日本株式は、イラン戦争後こそエネルギーの中東依存度の高さから一時的に売られやすくなったものの、年初来で見たパフォーマンスは世界株式を上回っています。アジア(除く日本)株式や日本株式の底堅さの理由としては、①「AIビジネスにおけるツルハシ」の位置づけであるハードウェアや素材に強みがあることや、②コーポレートガバナンスの改善や安定政権などの「独自の好材料」が目立ち始めていることが挙げられます。
これらの強みについて確認すると、まず【左上】では今年のアジア(除く日本)株式の業績見通しの強さが見てとれます。世界株式とアジア(除く日本)株式の今年の予想EPS成長率見通しを比べてみると、世界株式の約17%に対してアジア(除く日本)株式は約35%(→昨年末時点の約20%から上方修正)と優位であり、更に情報技術セクターに絞れば世界株式の約51%に対してアジア(除く日本)株式は半導体関連などの追い風もあり100%超え(→昨年末時点の約44%から上方修正)と、かなりの高成長が期待されていることが分かります。
また、アジアでは日本や韓国、中国などでコーポレートガバナンス改革が進展し続けていることも買い材料になっています。例えば今年も、韓国当局が「株主価値の希薄化に繋がっていると批判されてきた親子上場を原則禁止にする」との意向を示したことが好感され、韓国株式が大幅高になる場面がありました。
最後に、日本株式に関しては、衆院選大勝による「長期安定政権期待」が今後数年に及ぶ好材料になる可能性があります。まず【右上】で過去の歴史を振り返ると、郵政解散後の小泉相場やアベノミクス開始に繋がった安倍相場は、「求心力の高い長期政権による政策実行力」が評価された結果として、日本株式の売買シェアの約7割を占める海外投資家が数年かけて日本株式を買い越していたことが分かります。続いて【右下】を見ると、過去は首相の在任期間が長いほど日本株式が上がりやすい傾向があったことも確認できます。具体的には、在任期間が2年未満の首相の下では日経平均の騰落率(年率、平均値)が4.5%と冴えなかったのに対し、在任期間が2年以上4年未満では7.2%、4年以上の長期政権では11.0%と切りあがっています。
以上の経験則を踏まえると、仮にこれから高市政権が長続きし、成長戦略を筆頭に政策実行力を示すこともできれば、海外投資家による息の長い買いが入り、今後数年にわたって日本株式を支える展開が期待されます。