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        地政学リスクが頻発する「新時代」における投資戦略は?「有事の金(ゴールド)」は役に立つ?

        前将
        前川 将吾

        グローバル・マーケット・ストラテジスト

        森文
        森岡 文彰

        グローバル・マーケット・ストラテジスト

        公開日: 2026/04/23
        Guide to the Marketsで解説!地政学リスクが頻発する「新時代」における投資戦略は?「有事の金(ゴールド)」は役に立つ?

        本レポートのトピック

        • 過去の地政学イベント発生後、株価はどう動いた?
        • 今回のイラン戦争を踏まえたポートフォリオの見直しは必要?
        • 地政学リスクが頻発する「新時代」をうまく乗り切るためには、「有事の金(ゴールド)」に分散投資をするべき?
        • 最近流行りの金の強みは? 
        • 金の弱みは?

        過去の地政学イベント発生後、株価はどう動いた?

        以下の図表は、1970年以降の地政学イベントとそのイベント発生から12ヵ月後までのS&P 500のパフォーマンスを示しています。これを見ると、過去は①米国の景気後退と重なった【灰色】の第4次中東戦争や【黄緑色】の米同時テロ事件のケース、もしくは②資源・食料価格高騰により世界的な大インフレをもたらした【青色】のロシアのウクライナ侵攻のケースなど一部を除けば堅調でした。また、少なくとも現時点では、今回の地政学イベントが深刻な米国の景気後退や世界的な大インフレを起こすとは考えられていないため、株式などのリスク資産に対して過度に悲観的になる必要はないかもしれません。

        今回のイラン戦争を踏まえたポートフォリオの見直しは必要?

        上記の通り、現時点では株価の長期低迷リスクをさほど警戒しなくてもよいのであれば、今回のイラン戦争を踏まえたポートフォリオの見直しも特に必要ないのでしょうか。

        ここで結論を先取りすると、我々はそうは考えません。なぜなら、以下の図表の【左上】で示している地政学リスク指数の推移を見ても分かる通り、ここ数年は明らかに危機的な地政学イベントの発生頻度が増えているため、このような傾向を意識した上でポートフォリオを構築する必要性が高まっていると考えられるためです(→【左上】では地政学リスク指数が200を上回った時のイベントを記載しており、2000年以降は6回の深刻な地政学リスクが発生していますが、そのうち4回は2022年からの直近約4年間で生じています)。

        足元の世界の安全保障や国際協調の揺らぎなどを考慮すれば、我々はイラン戦争後も「地政学・インフレ・金利・景気などの様々なリスク」と付き合っていかなければならない中、「投資戦略がロシア・ウクライナ戦争前や第2 次トランプ政権誕生前と同じまま」では、今後の相場をうまく乗り切れない可能性があります。

        以上の点を踏まえると、今回の地政学イベントは、「ポートフォリオが足元及び今後の世界情勢に耐性のある状態になっているか」を確認する良い機会であり、必要に応じて資産追加や資産配分の見直しなどを検討すべきタイミングかもしれません。

        Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『地政学リスクと金融市場』

        地政学リスクが頻発する「新時代」をうまく乗り切るためには、「有事の金(ゴールド)」に分散投資をするべき?

        地政学リスクが頻発する「新時代」をうまく乗り切るためには、日本の投資家の多くが保有している世界株式や米国株式に加えて、流行りの金(ゴールド)に分散投資をすべきか考えてみましょう。

        たしかに金も選択肢の一つですが、金を含むいわゆる「安全資産」や「ヘッジ資産」には一長一短がある点には注意が必要です。それを踏まえたうえで今回お伝えしたいのは、「新たな世界情勢を見据えた、分散投資先の分散」というキーワードです。投資の世界には「メインシナリオ」はあっても「絶対」は存在しないため、「メインシナリオ」に依存して株式などのリスク資産だけを保有することは推奨されておらず、プロの機関投資家でも「リスクシナリオ」を意識した分散投資を徹底することが基本中の基本になっています。ただし、足元の局面ではリスク資産からの「分散投資先も、分散すること」を検討するのがよいかもしれません。その重要性を知ってもらうために、以下では「安全資産」や「ヘッジ資産」には一長一短があるということを確認します。

        最近流行りの金の強みは?

        2022年のロシアによるウクライナ侵攻後や第2次トランプ政権の誕生後は、様々な理由により各国中央銀行を含む一部投資家が「米国離れ」を意識し始め、米ドルから金へのシフトが加速しました。

        この点は以下図表の【左下】が示している中央銀行による金需要などのデータで実際に確認でき、需給の観点から見た金価格の追い風要因となってきたことが分かります。今後に目を向けても、我々は2029年1月までトランプ政権が繰り出す不透明な政策に付き合わなければならないことを考慮すれば、引き続き「米国離れ」のリスクへの対策として金をポートフォリオの一部に加えておく価値はあるかもしれません。

        金の弱みは?

        金は「安全資産」と位置付けられることが多いですが、標準偏差(=リスク)の高さだけを見れば、果たして金が本当に「安全資産」と言えるのか怪しい点には注意が必要です。例えば以下の図表の【右上】で示している通り、2000年以降の年率リスクを計算すると、世界株式の15.5%に対して金は16.4%で、株式を上回っていることが分かります。一方、同じく「安全資産」とされている世界の投資適格債券は6%と低水準であることを踏まえれば、「現代の安全資産は債券ではなく金だ!」と考えて過剰に債券を減らし、金と株式に偏った分散ポートフォリオなどを組んでいると、将来どこかのタイミングで想定以上の値動きの荒さに困惑する可能性があります。

        加えて、「有事の金は地政学リスクに強い」との印象があるかもしれませんが、例えば【右下】で示している通り、ロシア・ウクライナ戦争が起きた2022年は、金のリターンがマイナスになっていた点はおさえておきたいところです。当時はコロナ禍後の特殊要因と資源価格急騰などを背景にインフレが加速し、【青色】の米国の実質金利も上昇したことが【灰色】の金価格の下落に繋がりました。このように、金は利息を生まないため、金利上昇には弱いという特徴はしっかり認識しておくべきでしょう。

        なお、今回のイラン戦争後も、金利上昇懸念が高まる中で金価格が下落していたことを考慮すれば、やはり「有事の金」という言葉に踊らされないようにする必要があると考えられます。

        ロシア・ウクライナ戦争が起きた2022年は、金を含めた幅広い資産が下落した厳しい年でした。一方で、そのような厳しい局面をプラスのリターンで乗り切れた資産もありました。この点については、来週リリース予定のレポート(「金(ゴールド)や株式、債券など数多くの資産が下落した原油価格急騰局面で活躍した資産は?」)で解説します。

        Guide to the Markets 2026年4-6月期版で解説『ゴールド』

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