Guide to the Marketsで解説!2026年のFRB・ECB・日銀の金融政策の見通しは?
<要旨>
2026年の米国の物価見通しは?
・現時点の材料を総合的に勘案すると、トランプ米関税によるインフレ加速は一時的とみています。エコノミストのコンセンサス予想では、2026年の後半から米国のインフレ率は減速基調に入ることが見込まれています。
・ただし、トランプ米政権による経済フレンドリーな各種政策が想定以上に米国経済を押し上げる場合は、「経済の体温計」である物価も高止まりしてしまうリスクには注意が必要です。
2026年の日米欧の金融政策の見通しは?
・米連邦準備制度理事会(FRB):ドットチャートの中央値は年内1回の追加利下げを示唆しています。しかし、市場は「ドットチャートの“深読み”」や「ハト派の新FRB議長誕生」などを背景に年内2回の追加利下げを予想しています。足元ではFRB新議長の動向に注目が集まるものの、「合議制の米連邦公開市場委員会(FOMC)」の下では、結局データ次第の政策運営が続くとみています。
・欧州中央銀行(ECB):景気や物価見通しの改善を受けて、3ヵ月前まで話題になっていた「2026年の追加利下げの有無」は、もはや市場の関心事ではなくなっています。今となっては、「利上げがいつから始まるか」に注目が集まっています。
・日銀:市場は2026年前半(早ければ4月)の追加利上げを織り込むも、「為替次第でタイミングは前後する」との見方が多くなっています。過去のレポートで今後の注目点として挙げていたターミナルレートについては、1%台後半まで予想が切り上がっています。
過去の歴史から学ぶ! 米景気後退を伴わないFRBの利下げ期の金融市場の特徴は?
・過去は米景気後退を伴わない場合、「米利下げサイクル開始~最後の利下げまでの期間」において、米国株式も米国債券も好調でした。
・「今回の利下げサイクルは2026年後半まで続き、景気後退も訪れない」という足元の市場見通しに基づけば、米株高&米債券高の「適温相場」が当面続く可能性があります。
<本文>
2026年の米国の物価見通しは?
下記の図表の【左】で示している米国の消費者物価指数(CPI)の寄与度の内訳をみると、2025年は関税の影響を受けたコア財(→オレンジ色)の価格上昇がインフレに寄与したことが読み取れます。一方、サービス価格(→青・紫色)に目を向けると、住宅価格や賃金上昇の鈍化などの影響を受けて減速傾向にあることが分かります。今後の見通しについては、エコノミストのコンセンサス予想(→黒色のダイヤマーカー)を確認すると、2026年の前半は関税の価格転嫁の継続などを背景に3%前後で高止まりするものの、2026年後半からは2%に向かって徐々に落ち着いていくことが予想されています(→パウエルFRB議長も同様に2026年後半のインフレ鈍化を見込んでいます)。
また、【右上】で消費者の期待インフレ率をみても、短期・長期のどちらも安定的に推移している点は安心材料です。
一方で、先日リリースしたレポートで指摘した通り、今年は経済・市場フレンドリーな各種政策の効果もあり、米国の経済成長が加速し、潜在成長率を上回る可能性がある点には注意が必要でしょう。物価は「経済の体温計」であるため、経済や労働市場が想定以上に強くなる場合は、インフレ再燃のリスクが強まることになります。
今後は、米国のインフレ率に数ヵ月先行する傾向がある米国の総合PMI(購買担当者景気指数)の販売価格指数(→【右下】参照)の動向などに注意を払いたいところです。
Guide to the Markets 2026年1-3月期版で解説『米国:インフレ率と期待インフレ率』
2026年の日米欧の金融政策の見通しは?
下記の図表は、日米欧の金融政策とその見通しについて示しています。
以下はいずれも執筆時点(2026年1月26日時点)の見通しです。
FRBの金融政策の見通し
FOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)をみると、中央値ベースでは年内1回の追加利下げが見込まれている一方、金融市場では年内約2回の利下げが予想されています。この乖離の背景としては、例えば次の2点などが考えられます。
まず第1に、ドットチャートにおける19人のFOMCメンバーの見通しの中央値は確かに1回の利下げを示唆しているものの、一部の市場参加者は今年の投票権を持つ12名のメンバーがハト派寄りである可能性に注目しており、「投票メンバーに限った中央値は恐らく2回であるため、2回の追加利下げを実施するハードルはそれほど高くない」と考えている可能性があります。
第2に、「2026年半ば以降は、トランプ大統領が指名するハト派の新FRB議長が積極的な利下げに向かっていくはずだ」という投資家の思惑も、年内2回の市場織り込みに影響しているとみています。
上記の通り、市場は年内2回の利下げを織り込んでいますが、この織り込みが変化するリスクについて考えてみましょう。
下図の「FRBによる見通し」の表で2026年の値を確認すると、実質GDP成長率は2.3%で長期見通しの1.8%を上回る強さが見込まれている一方、インフレ率は2.4%で依然として2%のインフレ目標を上回ることが予想されています。
このような強い経済とインフレ見通しにも関わらず追加利下げが見込まれているのは、今年の失業率が4.4%と長期見通しの4.2%を上回っているからだという点は認識しておくべきでしょう。裏を返せば、「景気は強いが、雇用は弱い」という足元のやや特殊な状況が変化し、「景気が加速し、雇用も強さを取り戻す」という展開になれば、インフレが高止まりする環境下でやや引き締め的な金融政策が維持されるリスクには注意が必要かもしれません。上記の通り、新FRB議長はできる限りハト派寄りの金融政策を目指すとみていますが、「合議制のFOMC」の下ではデータに明らかに逆らうような政策運営は困難でしょう。
ECBの金融政策の見通し
3ヵ月前の時点では「2026年の追加利下げの有無」が焦点となっていましたが、足元では「2026年は様子見」との見方が強まり、むしろ「2027年からの利上げ」に注目が集まっています。
このような市場見通しの変化の背景としては、貿易摩擦や地政学リスクに対する警戒感が和らぐ中で、企業や家計の経済活動の改善や政府の財政出動への期待が高まっている点などが挙げられます。
日銀の金融政策の見通し
まず次回の利上げ時期については、経済・物価・金融情勢に関する現在の見通しに大きな変更がない限り、2026年前半(早ければ4月)頃が有力とみられています。とはいえ、高市政権が「緩和的な金融政策」を好んでいることが利上げの後ずれリスクとなる一方、円安基調が止まらなければ前倒しとなるリスクがあることなどを踏まえれば、今後の利上げのタイミングは依然として不透明と言わざるを得ません。
ただし、過去のレポートでも指摘した通り、投資家にとって本質的に重要なのは、次回の利上げタイミングではなくターミナルレートの水準でしょう。その織り込みの変化を確認すると、6ヵ月前の1%→3ヵ月前の1%台前半→足元の1%台後半と徐々に切り上がっています。引き続き、植田総裁や高市首相から市場のターミナルレート見通しに修正を迫るような発言が飛び出し、債券市場のボラティリティーが高まる展開にならないかを注視しておきたいところです。
Guide to the Markets 2026年1-3月期版で解説『日米欧の金融政策とその見通し』
過去の歴史から学ぶ! 米景気後退を伴わないFRBの利下げ期の金融市場の特徴は?
FRBの利下げ期間中の市場動向を考える上では、はじめに「利下げ期に景気後退が起きるかどうか」を考える必要がありますが、今回のケースについては、上記(FRBの金融政策の見通し)で確認した通り、多くのエコノミストや投資家は「景気後退を伴わない利下げサイクル」であると想定しています。そこで下記の図表の【左上】で過去の「景気後退を伴わない利下げサイクル」の歴史を振り返ると、1980年以降では1980年代半ばと1990年代後半の2つのケースが参考になることが分かります。これらの当時の状況を【左下】と【右上】でみると、両ケースとも「利下げサイクル開始~最後の利下げまでの期間」は、米国株式と米国債券(投資適格)が右肩上がりのパフォーマンスになっていたことが確認できます。
また、【右下】で示している通り、今回の「景気後退を伴わない利下げサイクル」は、少なくとも2026年の後半まで続くことが市場で織り込まれています。過去の歴史を参考にすれば、2026年も米国株式と米国債券が堅調に推移する「適温相場」が当面は続くことが期待できるかもしれません。