
Guide to the Marketsで解説!不透明な環境下こそ分散投資? ➀ ~インカム系資産、オルタナティブ資産への分散~
<要旨>インカム系資産、オルタナティブ資産への分散の重要性
足元のように経済・市場環境が分からない時は、「資産を分散してリスクを抑えながら投資を続ける」というのが資産運用の王道です。株式と債券への分散が基本とされますが、このような単純な分散投資に一味加えたい場合は、高配当株式やオルタナティブ資産への投資を検討するのも一案です。
Guide to the Markets 2025年4-6月期版を解説『分散投資の重要性①:関税・景気・業績懸念時の株式と債券の動向』
上記の図表は、関税・景気・業績懸念が高まった時の世界株式と世界投資適格債券の動向を示しています。第1次トランプ政権時と今回の第2次トランプ政権下において、関税・景気・業績に関する懸念を背景に比較的大きなリスクオフが発生する局面では、債券がしっかり上がってくれる傾向があったことがわかります。したがって、過去は「投資の基本」とされる株式と債券の分散投資がきちんと実践できていれば、波乱相場の渦中でも保有資産の一部が上昇してくれたことで、恐怖心が幾分緩和されていた可能性があります。
Guide to the Markets 2025年4-6月期版を解説『分散投資の重要性②:インカム系資産の魅力』
上記の図表では、世界高配当株式や世界投資適格債券といったインカム系資産の魅力を示しています。
【左】が示している通り、2000年以降のデータに基づけば、世界高配当株式は世界株式と比べて下値抵抗力がある一方、上昇にはしっかりついていく傾向があります(→世界株式への下落追随率は74%に対し、同上昇追随率は86%)。この非対称的な追随率の結果、上昇・下落の両局面を合計した通期のリターンは、世界株式よりも世界高配当株式の方が高いことが分かります。
また、【右上】が示している通り、世界株式よりも世界高配当株式の方がトータルリターンは高くリスクは低いため、世界高配当株式のシャープレシオは世界株式を上回っています。
以上に加えて、【右下】が示している通り、足元のバリュエーションをみても、世界高配当株式は世界株式と比べて相対的に割安感があり、投資タイミングの観点からも妙味のある資産といえるでしょう。
これらの材料を踏まえれば、株式と債券の単純な分散投資の代わりに高配当株式と債券の「インカム系資産の分散投資」を行うことで、投資家はより低いリスクでより高いリターンを得られる可能性が高まると考えられます。
Guide to the Markets 2025年4-6月期版を解説『分散投資の重要性③:分散ポートフォリオとオルタナティブ資産』
一部の投資家の間では、2022年の景気悪化と物価高の同時進行、そしてそれ故に生じた株安と債券安の「ダブルパンチ」の印象が根強く残っており、「債券は株安時のヘッジにならない」との不信感があるかもしれません。
しかし、このような株安と債券安の同時進行は滅多に起きないという点は理解しておきたいところです。データが取得可能な1991年以降を見ると、上記の図表の【左】が示している通り、この株安と債券安の「ダブルパンチ」が発生したのは2022年の1回のみでした。この年は米国のインフレ率が8%台という異常な局面であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が急速な利上げを実施していたことを忘れてはいけないでしょう。
とはいえ、「米政権の関税等が、2022年のような景気悪化と“強烈な”物価高を再びもたらす」というリスクを本格的に警戒している場合は、【右】が示している通り、株式・債券のどちらとも相関が低いヘッジファンドのマクロ戦略や実物資産(→コアの不動産やインフラ、輸送資産、森林)への分散投資を検討するのが一案です。これらのオルタナティブ資産には異なるリスク(流動性リスク等)がある点には注意が必要ですが、2022年の年間リターンがプラスだったという実績がある点は魅力的です。
景気悪化と物価高が同時に進む「スタグフレーション」のリスク、ひいてはそれによって株安と債券安が同時に生じるリスクを強く意識している投資家にとっては、「オルタナティブ資産を追加した味付け分散」を検討するのも一案でしょう。