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トランプ米大統領の就任式以来、関税引き上げに関する発表を含む多くの政策が示されました。

その結果、足元では政策の不確実性の急激な上昇と、最近の企業・消費者のセンチメント悪化が相まって、投資家は経済の減速の可能性を懸念しています。

貿易を巡る混乱が深まる中では、景気減速懸念に耐性のある資産やインフレ懸念に耐性のある資産への投資やバリュエーションやクオリティーに着目した投資、アクティブ運用の活用などを検討する価値があると考えます。

貿易を巡り、どのようなことが起きているのか?

  • トランプ米政権は3月4日に、メキシコとカナダからの輸入品に対する25%の追加関税(カナダ産の石油・天然ガスなどは10%の追加関税)を発動し、2月に発動済みの中国製品への10%の追加関税は税率を20%に引き上げました。
  • 最近の関税発表により、米国の輸入品に対する平均実効関税率は7%ポイント上昇し、10.1%となり、1946年以来の最高水準となっています(注:当該試算は、需要に変化がないと仮定したものであり、あくまでも例示目的の値です)。
  • カナダ、中国、メキシコは、特に農産品とエネルギー製品を念頭に、関税および非関税措置による報復を示唆しています。
  • 中国に対するテクノロジー製品(半導体など)の更なる輸出制限に関する懸念も高まっています。当該懸念は、金融市場におけるモメンタム・トレードの巻き戻しと相まって、米国の超大型ハイテク7社を表す「マグニフィセント7(M7)」の株安に繋がっており、M7の株価は昨年12月の高値から13%下落しています。

関税政策やそれによる経済・物価への影響は、今後どうなるのか?

  • 関税政策に関しては、現時点で多くの不透明要因があります。例えば、既に発動された関税の実施期間、(合成麻薬フェンタニルの流入対策としての)米国の国境警備を巡る動向、追加の関税引き上げの発表、発表された関税強化に対する免除の有無、貿易相手国による追加の報復措置などが挙げられるでしょう。
  • 関税の短期的な経済的影響は、スタグフレーション的になる傾向があります。つまり、景気減速と物価高を同時に招くリスクがありますが、景気がどれだけ冷え込み、物価がどれだけ上昇するかは、輸入代替、企業などによるコスト吸収と価格転嫁、為替の動向、政策の不確実性が経済活動に与える影響など、様々な要因に依存します。
  • 米国経済は冷え込んでいるように見えますが、少なくとも現時点では、過度に悪化しているわけではありません。今後、どれほど冷え込むかは、関税政策がもたらす雇用市場と企業の利益率や設備投資への影響に依存します。安心材料は、2024年第4四半期に米国の経済と企業収益が堅調だったことでしょう。個人消費や設備投資、住宅投資などを含む国内最終需要の実質成長率は3.1%で、企業収益の成長率は18%でした。

貿易を巡る混乱が深まる中での市場見通しと投資戦略は?

  1. 株式投資に調整はつきもの:足元で米国の大型株は史上最高値から6%下落していますが、このような下落は平均して年に4回見られます。政策の不透明感が強い間は、経済成長やインフレ、財政に関するニュースで投資家が一喜一憂する展開が続くでしょう。
  2. リスクオフの局面では、複数の資産が必要であることを思い出す:
    • 景気懸念が高まる局面で信用力の高い債券が活躍することは足元でも証明されており、米国投資適格債券の指数は今年の1月末から2%以上上昇しています。
    • 一方、インフレや財政を巡るリスクが投資家の主な懸念となる場合は、実物資産、金、ヘッジファンドなどへの投資を検討してもよいかもしれません。
  3. バリュエーションとクオリティーが重要:これまで投資家の期待が高い一部の株式のバリュエーションが過熱気味だった点や、従来よりも幅広い企業で増益が見込まれつつある点を背景に、足元では米国およびグローバル株式の中で、より幅広い株式が再評価されています(例えば、年初来のパフォーマンスをみると、M7のリターンが−9%の一方、S&P 500指数のうちM7を除く株式のリターンは+1%です)。米国の小型株の収益期待は高いですが、景気が冷え込みつつある局面では利益率や財務安定性などのクオリティーに焦点を当てる必要がある点には注意したいところです。クオリティーの低い小型株よりもクオリティーを意識した大型や中型株に注目するのが一案でしょう。
  4. アクティブ投資で勝者と敗者を見極める:各種政策の影響は一様ではない可能性があります。最近の米国の関税とそれに対する他国の報復関税を巡っては、自動車と自動車部品、小売、食料品、建設などの業界への影響が注目されています。全ての企業が同じように混乱を乗り切れるわけではありません。
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