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FOMC:決定内容

11月の会合で、米連邦公開市場委員会(FOMC)は全会一致で0.25%の利下げを決定し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.50%~4.75%とすることを決定しました。

インフレ率の鈍化の進展と最近の雇用データが、より中立的な政策スタンスへの移行を後押ししたものの、今後の経済指標や財政政策の変化が将来の利下げペースを遅らせる可能性があります。

声明文は微修正されたものの、メッセージは概ね一貫していました。

  • 前回の声明文で使用された「雇用の伸びは鈍化」という表現は、「年初来、労働市場の状況は概ね緩和」に変更されました。これは、月次の雇用統計の変動や求人件数の減少を受けた修正とみられます。
  • 「インフレ率は2%の物価目標に向けてさらに進展した」という文の「さらに」という表現が削除されました。これは、インフレ率が2%を超えている中でインフレ率の鈍化の進展がやや停滞しており、直近の消費者物価指数(CPI)も予想をわずかに上回ったためだと考えられます。
  • 「インフレ率が2%に向けて持続可能な形で推移しているとの確信を深めた」という文章も削除されました。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、この「確信」は緩和サイクルを開始するために必要な条件であり、すでに始まっているためと説明しました。
  • 最後に、「インフレの進展とリスクのバランスを考慮し」というフレーズは、「目標の達成を支えるため」という簡潔な表現に変更されました。これは、労働市場のデータの重要度が高まる中でインフレだけに重点を置かないようにした可能性があります。

パウエル議長の記者会見

記者会見において、パウエル議長は政治的な話は避け、12月の金融政策方針についても言及することを控えました。パウエル議長は、財政面を背景に足元で米国債利回りが上昇していることについて触れたいわけではなかったものの、「選挙が近い将来に政策決定に影響を与えることはない」と明言した一方で、「財政政策の変化は時間をかけて考慮される可能性がある」と述べました。

12月を見据えて、パウエル議長は、「今後高い不確実性があることを考慮すると、現在はフォワードガイダンスを示すのに良いタイミングではない」とコメントしました。市場は12月の利下げの確率を68%(米国時間11月7日時点)と織り込んでいるものの、今後のインフレと労働市場のデータが主要な決定要因になるとみています。

12月以降、将来的な関税引き上げや税制変更の可能性によってインフレ圧力が再燃する場合、FOMCは一層困難な立場に置かれる可能性があります。

しかし、パウエル議長は、「将来の利下げのペースや目標を調整する準備はできている」と述べました。

市場の反応と今後の見通し

FOMCでの決定を受けて、米国10年国債利回りは低下し、米国株式は上昇しました。

米国大統領選挙の影響が落ち着くにつれて、投資家は政策の不確実性ではなく、経済の状況に焦点を当てるべきです。具体的には、インフレの鈍化、潜在成長率を上回る経済成長率、健全な労働市場、堅調な利益成長などが株式を支えるはずです。

FRBの利下げは米国債利回りの低下につながるとみていますが、最近の米国債利回りの上昇を受けてインカムは魅力的な水準になっており、債券への良い投資機会が生まれています。