2023/04/21
資産運用における為替変動への対応を考える
3月のリターン
2023年3月の騰落率は年1回決算型、毎月決算型ともにマイナス0.8%でした(図①)。3月には、金融システム不安が広がったことにより、基準価額の下落幅が一時拡大した局面がありましたが、月末に向かって回復しました。その背景として、月報4ページ「市場概況」に、「FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ終了期待が高まった」とあります(図③)。その後も基準価額は回復傾向が続き、本コラム執筆時点では2月末と比較してプラスのリターンとなっています1。
幸いなことに、現時点では金融システム不安は、2007年以降の世界金融危機の時にみられたような拡大は見せず、個別の銀行の事情に端を発する限定的なものと考えられています。とは言え、運用チームの「市場見通し」(4ページ)では「銀行の融資基準の厳格化やそれに伴う先進国市場の景気減速を懸念」とあり、「軽度な景気後退」の可能性も視野に入れて運用に当たっていることがわかります(図④)。
資産運用における為替変動への対応を考える
2022年には米国の利上げなどにより、日米金利差が広がり、大きく円安が進行しました。そのため、為替ヘッジを行わずに米ドルを含めて外貨建ての資産に投資していた日本の投資家の多くは、株価や債券価格の下落による損失(含み損を含む)のすべてまたは一部を為替差益で相殺することができたでしょう。足元やや円高方向に動いたとは言え、2021年末の水準と比較すると引き続き円安水準であり、含み益を持っている投資家も多いと考えられます。為替相場の変動によって恩恵を受けたという成功体験の記憶が新しい今、投資家の皆さんが為替リスクを取りやすくなることは容易に想像できます。しかしながら、今後想定外の円高となって損失を被る可能性も忘れてはいけません。理想的な運用の仕方としては、円高になりそうなタイミングで、外貨建ての保有資産を売却したり、為替ヘッジのある投資信託や日本株などの国内の資産に資金をシフトしたりすることでしょう。しかし、為替レートは想像以上に変動性が高く、株式や債券と異なり、分析によって得た理論的な価値からかい離することが多く、金融のプロをもってしても実際のマーケットの動きを予想することが難しいことは覚えておきましょう。また、各国の物価を加味した実質実効為替レートで見た場合、現時点では、過去平均に比べて米ドルは割高、円は割安と考えられます(Guide to the Markets 2023年第2四半期版 48ページ)2。今後の日米の金融政策の方向性次第では、円高方向に動く可能性は認識しておきましょう。
多くの方の資産運用の主な目的は中長期で安定的なリターンを獲得することでしょう。分散投資の一環として外貨建ての株や債券に投資を行うのであれば、株価や債券価格の変動リスクだけでなく、為替相場の変動リスクも含めたリスク管理が必要と考えます。リスクを分散したいのであれば、為替リスクについても分散することを検討すべきで、その最も簡単な方法は、為替ヘッジありと為替ヘッジなしを組み合わせることです。為替ヘッジを行うと、その分コストがかかりますので、リターンの一部が損なわれる可能性はありますが、中長期の観点で考えて、ヘッジコストを保険料ととらえ、為替リスクにも配慮した資産運用を行うという考え方も忘れないでください。
ベスト・インカムは世界中の株や債券などに投資し、為替ヘッジを行っています。2023年3月末現在の為替ヘッジ比率は94.2%です(2ページ、図②)。ご自身のポートフォリオを見直して、もし為替リスクを取りすぎていると考えるなら、ベスト・インカムのような為替ヘッジありの投資信託への投資も一考に値するのではないでしょうか。