マーケット環境
4月初旬に弱気相場へ転じたアメリカの大型株は、その後反発し過去最高値を更新しました1。投資家は短期的な弱さよりも長期的な成長期待を重視する傾向にありますが、アメリカの株式市場は依然として大きく揺れ動く可能性があります。このため、ポートフォリオの安定性を高めて、投資の継続を後押しするような運用戦略への関心が投資家の間で高まっています。
投資家は、企業利益の縮小圧力や需要の減退、高関税などの短期的課題と、AIの収益化やインフラ整備などテクノロジー分野を中心とした長期的な成長機会とのバランスを取る必要に迫られています。
米テクノロジー株の不安定な動きの中で、確実性の高い何かを追求
AIをはじめとする急速な技術革新は、市場の成長機会であると同時に市場の変動要因にもなり得ます。特に主要テック企業やAIのリーダー企業は、今年のこれまでの業績において大きなばらつきが見られました。AI分野への継続的な投資は共通していますが、事業構造やバリューチェーンでの立ち位置は企業ごとに異なります。
こうした中では、長期的な成長企業や底堅い銘柄を見極め、適切な投資機会を捉えるアクティブ運用が有効と考えられます。例えばインカムに注目した運用戦略は、市場のエクスポージャーをある程度維持しながら、市場が不安定な時期において、インカムが下値リスクを部分的に補う役割が期待されます。
その一例が、市場よりもボラティリティを抑えながらより高いインカム収益の可能性を併せ持つ JPモルガン・ナスダック米国株式・プレミアム・インカムETF(JEPQ)です。
パフォーマンスの振り返り
JEPQはトータルリターンを追求する運用商品のひとつです。市場の下落局面でインカムがクッションとなって損失の一部を補い、下値の切り上げと上値の部分的な 獲得を狙った戦略です。コール・オプションの売却によるプレミアム収入(インカム)を原資として毎月分配を目指します。ただし、大きな株価上昇局面で上昇メリットの一部を放棄します2。
JEPQの設定以降のインカムの年平均値は11.5%、トータルリターンは14.6%です。ナスダック100と比較してボラティリティが抑えられており、リスク対比で良好な実績を示しています3。
JEPQは最近の市場が大きく上下するそれぞれの局面で期待通りの値動きとなりました。年前半、アメリカの株式市場は急上昇の後、大きく売り込まれました。ナスダック100は2月19日の高値から4月8日にかけて23%下落しました。その後、6月末までに30%上昇しました4。
マーケットの下落期間で、JEPQはオプションの売却により獲得したインカムによって株価下落の影響の一部を相殺できました。その後、4月後半から5月にかけて市場がV字回復した局面では、JEPQは市場の上昇メリットを部分的にしか獲得できませんでしたが、これも想定通りの結果です。全体として年初来のJEPQの動きをみると、高い水準のインカムを獲得し、ボラティリティと市場追随率は市場よりも低く抑えられ、ダウンサイドリスクを抑制、市場の上昇のメリットを部分的に獲得することができました3。
結論
JEPQは、市場が不安定な時期において下落リスクを抑えつつ、プレミアムを原資に毎月分配を目指すという商品性格を持っており、資産運用の魅力的な選択肢の一つと考えられます。短期的に市場が不安定であっても、割高感への懸念が拭えない場合であっても、長期的な成長機会に着目し、アメリカ株やテクノロジー株への投資を継続しやすい選択肢を提供します。
インカムを追求する戦略を取り入れることで、ポートフォリオの耐性を強化しつつ株式投資を継続し、インカムと成長のバランスを追求することが可能です。JEPQは、長期的にインカムの獲得と成長機会を両立させ、株価変動リスクの抑制を目指します。