Guide to the Marketsで解説!FRBの利下げの歴史から学ぶ!利下げ後の株式や債券のリターンは?
<要旨>
・過去は米国の景気後退を伴わない場合、米連邦準備制度理事会(FRB)による「利下げサイクル開始~最後の利下げまでの期間」において、米国株式と米国債券のリターンは堅調でした。「今回の利下げサイクルは来年まで続き、景気後退も訪れない」という足元の市場見通しに基づけば、米株高&米債券高の「適温相場」が当面続く可能性があると見ています。
・資産クラス別で見ると、FRBによる過去の「予防的利下げ1」の局面では、米国・グロース・ハイテク・景気敏感系の株式がアウトパフォームしていました。今回も「予防的利下げ」であると想定するのであれば、これらの株式が有望と考えられるかもしれません。
1 経済の先行きに不透明感がある場合や景気の減速が予想される際に、経済が実際に悪化する前に中央銀行が金利を引き下げる政策のこと。
Guide to the Markets 2025年10-12月期版で解説『米国:景気後退を伴わないFRBの利下げサイクルと金融市場』
上記の図表の【左上】は、FRBの政策金利と米国の景気後退期について示しています。
FRBの利下げ開始後の金融市場の動向を考える上では、まず「利下げ期に景気後退が起きるかどうか」を考える必要がありますが、今回のケースについては、多くのエコノミストや投資家は「景気後退を伴わない利下げサイクル」であると想定しています。そこで過去の「景気後退を伴わない利下げサイクル」の歴史を振り返ると、【左下】で示した1980年代半ばと、【右上】で示した1990年代後半の2つのケースが参考になります。両ケースとも「利下げサイクル開始~最後の利下げまでの期間」は、【緑色】の米国株式と【紺色】の米国債券(投資適格)が右肩上がりのパフォーマンスになっていました。
今回の利下げサイクルは、【右下】で示している通り、少なくとも来年末まで「景気後退を伴わない利下げ」が続くことが市場で織り込まれているため、過去の歴史を参考にすれば、来年末まで米国株式と米国債券が堅調に推移する「適温相場」が続くことが期待されます。
Guide to the Markets 2025年10-12月期版で解説『FRBの利下げ開始後の各資産のリターン』
上記の図表は、FRBの利下げ開始から半年間の各資産のトータルリターン(利息・配当を含む)を示しています。
幅広い資産クラスのデータが取得可能な1990年代半ば以降のFRBによる利下げの歴史を振り返ると、以下のパターン別の特徴が見られました。
➀利下げ開始後すぐに米国の景気後退がきた場合2:
利下げ開始から半年間の平均リターンを見ると、ごく一部を除き多くの国・スタイル・セクター別の株式が下落した一方、米国国債や米国投資適格社債などの信用力の高い債券は上昇しました(→補足:新興国・素材・エネルギー株式の平均リターンはプラスになっていますが、これは世界金融危機前の新興国ブームの最終局面の影響です。これらの資産は、利下げから半年間という当該チャート上の期間ではプラスのリターンになっていますが、更に期間を延ばして利下げから1年間という期間で見ると、マイナスのリターンに転じています)。
②予防的利下げの場合(=利下げ開始後すぐに米景気後退が来なかった場合)3:
同じく利下げ開始から半年間の平均リターンを見ると、全ての資産がプラスで「何でも上がる相場」の様相を呈していました。相対的には、債券より株式、株式の中でも国別では米国、スタイル別ではグロース、セクター別では情報技術セクターやコミュニケーション・サービスセクターといったハイテク
株式、景気敏感系が力強かったことが分かります。
以上を踏まえて今回の利下げ局面における投資への示唆を考えると、2025年9月から始まったFRBの利下げは、現時点では②の「予防的な利下げ」のパターンに当てはまるとの見方が大勢であり、上記②の過去の歴史を踏まえれば、当面は米国・グロース・ハイテク・景気敏感系の株式が有望と考えられるかもしれません。
2 「利下げ開始後すぐに米景気後退がきた場合(③と④)の平均値」について、③は2001年3月に景気後退入り、④は2007年12月に景気後退入りした。
3 ⑤の2019年7月の利下げのケースは、ソフトランディングから始まったが、その後に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による金融市場の変動を経験した。