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Guide to the Marketsで解説!トランプ政権の関税・移民・財政政策の見通しは?

<要旨>

  • 米国では約3ヵ月前と比べて平均関税率が上昇し、移民対策も強化されているものの、来年の米中間選挙を意識したトランプ政権による柔軟な対応が垣間見えることもあり、現時点では市場の過度な懸念を招くには至っていません。また、今後についても経済に大ダメージを与えるような平均関税率や移民政策にはならないようにトランプ政権はコントロールしていくと見ています。
  • 財政政策に関しては、企業減税が投資や株主還元の拡大に繋がると考えています。加えて、家計減税は来年初頭の大規模な税還付をもたらしますが、それを見越して早ければ今年の年末商戦から個人消費が盛り上がる可能性もあります。

Guide to the Markets 2025年10-12月期版で解説『米国:関税、移民、大型減税』

上記の図表の【左】は、米国の全輸入品の平均関税率を示しています。同平均関税率の推計値を見ると、今年4月8日時点のピークの30%→約3ヵ月前(7月2日時点)の約15%→足元の約19%と引き続き動き続けています。約3ヵ月前からの上昇については、各国・地域との交渉により新たな関税率が適用されたことなどが背景で、特に金融市場の混乱を招くような変化ではありませんでした。今後は、米最高裁が今年の11月から本格的に審理する相互関税の合憲性を巡る訴訟に注目が集まるでしょう。仮に違憲となれば、これまでの徴収額の還付の対象や規模に加えて、相互関税に代わる新たな関税の発動が焦点となると見ています。

このように、依然としてトランプ政権の関税政策には不透明な点が多く残るものの、同政権は消費者や業界団体への配慮からか、現実的な対応を見せ始めている点はおさえておきたいところです。例えば、①一部の品目を相互関税の対象から外すことを検討し始めたり、②新たに発表した医薬品関税についても、米国の処方箋の約9割を占めるジェネリック医薬品は対象外としたほか、一部の製薬大手などとディールをまとめて関税対象を減らすなど、必要に応じて柔軟な対応を取っています。③加えて、今後は中国やインドなどとの貿易交渉が進展する可能性もあります。

以上の動向を踏まえれば、引き続き紆余曲折はありつつも、来年の米中間選挙を意識し、最終的には経済に大ダメージを与えるような平均関税率にはならないと考えています。

上記の図表の【右上】は、米移民税関捜査局(ICE)による1ヵ月当たりの新規の拘束者数を示しています。その数は昨年末の約8千人から足元では3万人前後まで急増しており、トランプ政権は不法移民の摘発を強化していることが読み取れます。その他にも、国境警備の強化や亡命申請の制限、H-1Bビザ(→米政府が高度な専門技能を持った米国外の人材を対象に発給する就労ビザ)に10万ドルの手数料を課す大統領令など、様々な移民対策を講じています。もっとも、関税と同様に、状況に応じて過度な対策は避ける姿勢が垣間見えます。例えば移民の強制送還については、一時は年間で100万人を目指すとの報道もありましたが、現時点のペースでは達成する可能性が低いと考えられています。またH-1Bビザに関しても、手数料は現在発行しているビザや更新には必要ないとしたほか、「国益免除」も設け、国土安全保障省長官が国家利益に資すると判断した場合は手数料免除が可能であることも示唆しています。

上記の図表の【右下】は、米連邦政府の基礎的財政収支と純利払いを示しています。引き続き、企業及び家計向けの減税が来年にかけての米国経済や企業業績の追い風となる見込みです。まず企業向け減税に関しては、国内研究開発費の控除や設備投資の全額を1年目に所得から差し引ける特別減価償却などが注目されており、これらの減税は米国での投資や株主還元の拡大に繋がると考えています。直接的には、情報技術、コミュニケーション・サービス、ヘルスケアセクターなど、間接的には資本財・サービスセクターなどが恩恵を受ける可能性があります。一方、家計向け減税については、残業代・チップの免税措置や新たな各種税額控除などが個人消費の増加要因となることが予想されます。具体的には、来年初頭に大規模な税還付があり、これが家計の購買意欲を刺激すると考えられますが、この税還付を見越して、早ければ今年の年末商戦から個人消費が強含む可能性もあります。以上は現時点で既に決まっている財政政策ですが、一部の投資家の間では、「来年の米中間選挙前にトランプ政権が追加の刺激策を打ち出す」との見方もあります。

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