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Guide to the Marketsで解説!“割高→株安”、“金利上昇→株安”は本当?

<要旨>

  • 年後半は、徐々に投資家の関心が「関税の悪影響が出る2025年の予想1株利益(EPS)」から「減税やハト派的な米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長への期待が徐々に意識される2026年の予想EPS」へと移る可能性があります。年末に向けては、この2026年の業績拡大期待が株高圧力になる展開に期待できるかもしれません。
  • 「仮に予想EPSが堅調に推移しても、高すぎる予想株価収益率(PER)が切り下がることで株安になるのではないか」という見方はよくありますが、過去の歴史は、高バリュエーションでも企業業績が堅調ならば株高が続く可能性を示唆しています。
  • 過去のデータに基づけば、「米長期金利の上昇=株安」という単純な構図ではなく、「緩やかな金利上昇ならば株高持続」、「稀に発生する急激な金利上昇ならば株安」となる傾向がみられます。
  • メディアでよく見聞きする「金利上昇→予想PER低下」という主張は過去のデータでは証明されていません。

Guide to the Markets 2025年7-9月期版で解説『米国株式:企業業績見通しとバリュエーションとリターンの関係』

上記図表の【左】は、S&P 500の予想EPSの推移を示しています。予想EPSの見通しを基に今後の株価動向を占う投資家は多くいますが、予想EPSと一口に言っても色々あります。その中でも、市場参加者が最も重視するのは【赤色】の12ヵ月先の予想EPSでしょう。したがって、例えば今年の年末時点の株価水準を予想する場合には、年末時点における12ヵ月先の予想EPSの水準を考える必要がありますが、それはまさに2026年の年間(12ヵ月間)の予想EPSと一致します。以上を踏まえた上で、【紫色】の2026年の予想EPSの推移に注目すると、2025年の年初から5月中旬までは下方修正が続いたものの、足元では持ち直しています。今後の動向については、仮に2026年に発現する減税効果やトランプ米大統領が指名する新たなFRB議長下でのハト派的な金融政策への期待などを織り込めば、底堅さを維持できる可能性があります。

【紫色】の2026年の予想EPSは【赤色】の12ヵ月先の予想EPSよりもまだまだ上方に位置しているため、2026年の予想EPSが堅調さを保ったまま年末にかけて両者が収斂していくことを想定すれば、年後半は12ヵ月先の予想EPS上昇を伴う株高(=業績相場)が期待できそうです。一方、景気や企業業績の動向が想定以上に減速した場合は、FRBの利下げ頼みの相場(=金融相場)になる可能性が高まるでしょう。

米国株式が最高値圏で推移する中、「仮に今後の予想EPSが堅調でも、予想PER(→2025年6月末時点では21.5倍)が高すぎるので年末にかけての株高継続は困難」という意見をよく耳にします。しかし、これは過去のデータに基づけばあまり正当性がない主張です。【右】が示す通り、例えば1990年以降でS&P 500の12ヵ月先の予想PERが20倍以上だった月は79ヵ月ありますが、このような高バリュエーション時から6ヵ月後のリターンの平均値をみると約+3%で底堅い結果となっています。より本質的な分析をするために、予想PERが20倍以上の時点から6ヵ月後に①12ヵ月先の予想EPSが上昇したケース(サンプル数62)と②同予想EPSが下落したケース(同17)に分けてリターンの平均値をそれぞれ算出すると、①のケースでは約+6%と大きく上昇した一方、②のケースでは-8%と大幅に下落していました。以上を踏まえると、「予想PERが高いから年後半の株高は期待できない」という見方はあまり説得力がなく、過去のデータに基づけば、「年後半に予想EPSがしっかり上昇するのであれば、たとえ現在の予想PERが高くても更なる株高が期待できる」と言えるでしょう。

Guide to the Markets 2025年7-9月期版で解説『米国:金利の変動と株式のリターンの関係』

上記図表の【左】は、米国10年国債利回りの変動幅とS&P 500のリターンの関係性を示しています。【赤色】が示している「過去に米10年金利が上昇した月のS&P 500の平均リターン」をみると、①0.5%以上の大幅な金利上昇が起きた月はS&P 500の平均リターンが-1.6%と厳しい結果になっていたものの、②0.5%未満の金利上昇であれば、同リターンが+1%超と堅調だったことがわかります。なお、1990年以降で米金利が上昇した月の割合は約50%と半分であり、更にその内訳を見ると、②の緩やかな金利上昇の割合が46.5%と大半を占める一方、①の大幅な金利上昇の割合は僅か4.0%であるため、株安をもたらすような過度な金利上昇はそう頻繁に起きないと言えるでしょう。過度な金利上昇が持続的に起きるのは、2022年のような10%弱の大インフレ期にFRBが急速利上げを行うような局面ですが、先日公表したレポートで解説した通り、今回の関税インフレはピーク時でも3%台で一過性のものである可能性があります。FRBに関しても、景気次第では「年内利下げ無し」はあり得ますが「2022年のような急速利上げ」が始まる可能性は低いでしょう。

【右】は、米国10年国債利回りとS&P 500の予想PERの関係性を示しています。「金利が上昇すると予想PERは低下する」という話はまるで自明のように語られることが多いですが、過去の金利と予想PERの関係をみると、無相関であることが確認できます。したがって、メディアでよく見聞きする「金利上昇→予想PER低下」という主張は過去のデータでは証明されていないと言えるでしょう。

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