Guide to the Marketsで解説!結局、経済や企業業績は米国が最強?
<要旨>
- 米関税政策の影響で悪化し続けていたソフトデータ(景況感)や企業業績見通しは今年の4月に底を打ち、最悪期は脱した可能性があります。今年の1~4月は米国の強さに陰りが生じていたものの、足元では再び「米国最強状態」が復活しています。
- 今後の注目点は、遅れて弱まるハードデータ(GDPなど実績を集計して発表される経済指標)に市場がどう反応するかです。先行性のあるソフトデータや企業業績見通しの改善基調が崩れなければ、市場はハードデータの一時的な悪化を軽視する可能性があります。
Guide to the Markets 2025年7-9月期版を解説『世界のファンダメンタルズ:企業や家計の景況感と企業業績見通し』
上記の図表の【左下】は日米欧中の総合PMI(購買担当者景気指数)を示しています。PMIは、50を超える場合、前月と比べて企業の景況感が改善していることを示し、反対に50を下回る場合には、前月と比べて企業の景況感が悪化していることを示します。【右下】は米国の消費者マインドを示す指標の一つであるコンファレンスボード消費者信頼感指数です。これらをみると、トランプ関税への警戒感から今年は年初から企業や消費者の景況感の悪化傾向が続いていたものの、相互関税が発表された4月頃に底を打った可能性があることが示唆されています。
今後については、①中間選挙を睨んで米政権が「トランプ・プット1」や「TACO(Trump Always Chickens Outの略。トランプ大統領はいつも尻込みするという意味)」のスタンスを継続し、②減税や規制緩和への期待感が高まり、③仮に米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げも実施されるようであれば、一本調子とはいかずとも、基調としては回復していくことが期待されます。なお、日米欧中でPMIを比較すると、昨年末から4月にかけては米国と日欧中の差が縮小しましたが、足元では再び「米国最強」の状態に戻っています。
1 株式市場の大幅下落などに直面した際に、トランプ政権が政策の軌道修正や市場支援策を講じること。
【右上】は、2024年米大統領選挙以降の各国・地域の企業業績見通しを示しています。日米欧と新興国の12ヵ月先の予想1株利益(EPS)の動向をみても、足元で「米国最強」が確認できます。米国株式の予想EPSは4月の米相互関税発表後に低下したものの比較的傷は浅く、すぐに上昇基調に戻っており、右肩上がりのトレンドを維持しています。一方、「米株離れ」の行先として足元で注目されることの多い欧州株式や日本株式の予想EPSは、米相互関税発表後の傷が米国株式よりも深く、足元に至っても回復基調に転じることができていません。
上記では、米国のソフトデータや12ヵ月先の予想EPSが堅調なことを確認してきましたが、2025年7-9月期は関税などの悪影響が米国のハードデータに表れてくる可能性が高い点には注意が必要です。とはいえ、株式市場は常に先読みをするため、仮に今後のハードデータが弱くなっても、フォワードルッキングな性質を持つソフトデータや企業業績見通しが回復基調を維持できるようであれば、株価は一喜一憂しつつも底堅く推移する可能性があります。