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Guide to the Marketsで解説!米経済の今後を左右するトランプ政策を知る:関税・移民・DOGE・減税の影響は?

<要旨>

  • トランプ米政権の関税強化・移民抑制・米政府効率化省(DOGE)による歳出削減などの「負の政策」に関しては、「市場の織り込み」という観点では既に最悪期を脱したものの、実体経済への悪影響は今後も出てくるでしょう。
  • 一方で、減税・歳出法案(一つの大きく美しい法案)の成立は2026年にかけての景気刺激に繋がるため、株式などのリスク性資産にとっては「正の政策」であると考えられます。

Guide to the Markets 2025年7-9月期版を解説『米国の経済政策➀:関税、移民、政府支出削減』

上記の図表の【左】は、米国の全輸入品の平均関税率を示しています。平均関税率の推計値をみると、今年の相互関税発表直後の4月8日時点の30%をピークに、足元では約15%まで急低下しています。とはいえ、同水準は2024年の2.4%からは大幅に上昇しており、歴史的な高水準であるため、当面は企業利益率の悪化や物価上昇などへの悪影響を注視する必要があります。なお、今後の関税率の見通しについては、4月以降の低下傾向が止まると考えています。各国との通商交渉に関しては、関税率が引き下げられる国(→実例:英国)があれば引き上げられる国(→実例:ベトナム)もあるほか、今後は半導体などの特定分野に対する追加関税も発動する可能性があるため、当面は10%台半ばから後半といった高水準の関税率が続くとみています。

【右上】は、米移民税関捜査局(ICE)による1ヵ月当たりの新規の拘束者数を示しています。トランプ政権は不法移民の摘発などを強化しており、ICEによる1ヵ月当たりの新規の拘束者数は昨年末の約8千人から足元では約2.4万人まで急増しています。今後もICEによる逮捕や強制送還が続くと労働市場などへの悪影響がより鮮明になる恐れがあります。もっとも、足元では農業やホテルの従事者は摘発の例外とする方針を示すなど、来年に予定されている米中間選挙を意識した現実路線への軌道修正を図る兆しも見られています。

【右下】は、DOGEによる政府支出の節約額を示しています。新政権発足後は、DOGEによる歳出削減(連邦政府職員の解雇や契約・助成金・不動産の見直し等)が米景気を冷やすリスクが懸念されました。しかし、事前の想定ほどはDOGEの歳出削減が順調に進んでいないという点はおさえておきたいところです。DOGEの公式サイトによれば、2025年6月末時点の政府支出の節約額の累計は0.19兆米ドルで、昨年の選挙中に掲げていた2兆米ドルはおろか、政権発足後に下方修正した1兆米ドルの目標にもまだまだ及んでいません。また、マスク氏の政権離脱でDOGEの影響力は低下しており、最近では政府助成金を一元的に審査・承認する権限を喪失したと報じられています。

上記で触れた米国政府による関税強化・移民抑制・米政府効率化省(DOGE)による歳出削減などの「負の政策」に関しては、「市場の織り込み」という観点では既に最悪期を脱した可能性があります。しかし、実体経済への悪影響は今後も出てくるでしょう。

Guide to the Markets 2025年7-9月期版を解説『米国の経済政策②:大型減税と財政状況』

上記の図表の【左上】は、米連邦政府の基礎的財政収支と純利払いの推移を示しています。減税・歳出法案(一つの大きく美しい法案)の中身をみると、(1)個人及び法人向けの減税や歳出拡大と(2)メディケイド(低所得層向け公的医療保険)などの歳出削減の両方があるものの、ネットで見ると(1)>(2)で財政赤字の拡大(=景気刺激)に繋がります。なお、(1)の減税に関しては、単にこれまでのトランプ減税(2017年税制改革法)を延長するだけではありません。残業代・チップの免税措置や新たな各種税額控除などが個人消費の増加要因となることに加え、国内研究開発費の控除や設備投資の全額を1年目に所得から差し引ける特別減価償却などが企業の投資を後押しすることで、2026年にかけて米景気を押し上げることが予想されます。

このように、減税・歳出法案の成立は今後の景気刺激に繋がるため、株式などのリスク性資産にとっては「正の政策」と捉えられるでしょう。

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