このページでは、米国の景気後退期の金融市場を見ています。
仮に米国の労働市場が急速に崩れ、「景気後退が確実視される状況」となった場合に有望な資産を考えてみます。そこで2000年以降の米国の景気後退期(景気後退開始月の月初から終了月の月末まで)のリターンをみると、堅調に推移する傾向があったのは国債や信用力が高い一部の社債に限られます。この点を踏まえれば、仮にこれから「景気後退の確信度がかなり強まる場合」は、利回り面の魅力も高まってきた信用力が高い債券への投資比率の引き上げなどが検討できるかもしれません。但し、次の2点には注意が必要です。注意点①:現時点で債券や現金に偏りすぎたポートフォリオを構築すると、それはそれで「事前に景気後退が来ると決めつけることに伴うリスク」を抱えかねません。例えば労働市場が強く、物価や金利上昇圧力も残る中で債券に集中するのは金利リスクへの配慮がやや欠けていると考えられます。一方で、景気後退を辛うじて回避できる可能性が残る中で現金に集中投資をすると機会損失のリスクを高めてしまう可能性があります。以上も踏まえると、やはり当面は債券や現金などの安全資産に加えて、高配当・ディフェンシブ株式も含めた「景気後退直前でも耐え得る資産」にバランスよく投資した上で、もう少し我慢強く景気後退の有無を見極めたいところです。注意点②:景気後退が続く限り株価が下げ続けたかというと、そうではありません。詳細はGuide to the Marketsの42ページに記載していますが、第2次世界大戦後の歴史を見ると、2001年の景気後退という唯一の例外を除き、S&P 500は景気後退の終了前に底を付けていたことがわかります。また、2000年以前の9回の景気後退期のリターンを見ると、9回のうち5回は、初期の下落よりもその後の上昇の方が大きく、景気後退期のリターンがプラスになっていたことも確認できます。