このページでは、グローバル金融市場の動向を見ています。
【左】では、2023年年初来の各資産のトータルリターン(利息・配当含む)を示しています。資産別のリターンランキングをみると、2023年1-3月期の金融市場は以下の3段階で変化したことが分かります。①【緑色】は年初~1月の米雇用統計発表前(2/2)までです。予想より良好な経済指標を好感し、景気の軟・無着陸期待が高まったことで、株式も債券も上昇傾向となりました。②【灰色】は1月の雇用統計後~シリコンバレー銀行破綻前(3/9)の期間です。パウエル議長の議会証言に代表されるように、無着陸期待が更なる利上げ観測を呼び込み、昨年の逆金融相場に逆戻りし、株式も債券も下落傾向となりました。③【青色】のシリコンバレー銀行破綻後~3月末では、金融不安で強行着陸懸念が強まる中、市場では選別投資への移行が見られました。安全資産やグロース・ディフェンシブ株式が優位となる一方で、バリュー・景気敏感株式が劣後する展開となりました。
【右】は2022年以降の米国の金利と株式、企業業績とバリュエーションを示しています。【紺色】の米国10年国債利回りが、高インフレなどを背景とした米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げを受けて上昇したことや、今後の景気に対する懸念が高まったことなどを背景に、【緑色】のS&P 500は下落しました。株価の変動要因を【紫色】の予想1株利益(EPS)と【深緑色】の予想株価収益率(PER)に分けて確認してみます。2022年「前半」は、金利上昇や景気減速懸念の高まりなどを背景としたリスクオフを受けて予想PERが低下し、これが株価下落の主な要因になりました。一方で、予想EPSは上昇しており、株価の下支え要因でした。2022年「後半」では、予想PERが上昇と下落を繰り返し、年末時点の予想PERは、年前半終了時点と比較して若干の上昇となりました。一方で、年前半の株価の下支え要因であった予想EPSは、景気減速などを背景とした企業業績の悪化懸念を受けて低下しました。
2023年の1-3月期も2022年「後半」と同様の傾向が続いています。予想PERが上昇と下落を繰り返し、予想EPSは低下傾向です。仮にこれからインフレや金利に関する脅威が弱まっていくとしても、少なくとも当面は更なる景気減速(場合によっては景気後退)や、企業業績の悪化懸念が残る点には注意が必要です。