このページでは、米国の景気サイクルに関連して、政策金利と長短金利差と失業率を見ています。
2020年の新型コロナなどの特殊な事例もありますが、過去は通常、①米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ【灰色】がどんどん進む中で、②「米国の景気後退の事前サイン」とされる米国の長短金利の逆転(【紫色】の長短金利差が0%を割り込む状況)が生じ、③失業率【青色】が底を打った後に米国の景気後退が訪れています。米国では高インフレが懸念される一方、足元の労働市場は力強く、少なくとも「早期に」景気後退が起きそうにないことから、FRBは金融引き締めに前向きな姿勢を見せています。実際に今年3月のFOMCでは、1回の利上げ幅を0.25%とした場合の年内の利上げ回数を3月を含めて7回とし、来年中には景気を冷やしもふかしもしない中立金利(2.4%)を上回る水準まで政策金利を引き上げる見通しを示しました。また、その後のFRB高官の発言を踏まえると、今後は1回の利上げ幅が0.5%になる可能性も高まっています。このように、「当面は」積極的な金融引き締めのリスクが意識されやすいですが、「中期的には」インフレよりも景気悪化のリスクを懸念する投資家も多く、後者の不安は米国国債の長短金利の逆転にも表れています(→Guide to the Marketsの40ページ参照)。
仮に、①FRBの想定以上に景気や金融市場の下押し圧力が強まる一方、②インフレ率がピークアウトして落ち着く兆しをみせていれば、「中期的には」金融引き締めのペースは鈍化し、必要に応じて利下げも検討される可能性があるでしょう。