このページでは、米国の信用市場と労働市場を見ています。
【左】では、米国の信用市場について見ています。【青色】の金融機関の貸出態度(商工業ローン)や、危機をいち早く察知する「炭鉱のカナリア」と呼ばれる米国ハイ・イールド債券の動向を見てみましょう。コロナ禍という特殊な景気後退ではなく、2001年3月からや2007年12月からの景気後退では、FRBの利上げ後に金融機関の貸出態度がどんどん厳しくなり、【灰色】のハイ・イールド債券の信用スプレッドが本格的に拡大してから、景気後退が来ていたことがわかります。足元では、金融機関の貸出態度が厳格化していることがわかります。今後は当該指標が一段と厳格化しないかを注視したいところです。
これらの悪材料がある一方、労働市場は堅調さを維持しており、少なくとも現時点では景気後退入りが「確実視」される状況ではありません。例えば、【右】の【緑色】で示されているサーム・ルール(当月を含む失業率の3ヵ月平均値と前月までの1年間の最低水準との差)に注目すると、同指標が0.5を上回ると景気後退入りのサインとされていますが、同指標の直近値は0で、目安の0.5と比べてまだ距離があることがわかります。この労働市場の強さは、物価高の悪影響を受ける個人消費の下支えにもなるでしょう。
以上の材料を踏まえれば、今後の米国経済は、少なくともパウエルFRB議長がインフレ抑制に必要と主張する「潜在成長率(1.8%程度)を下回る低成長」が続く可能性が高いと考えられます。そして、その低成長が「景気後退」に至るかどうかを見極める上では、FRBがどこまで利上げを続けるのか、ひいては必要に応じて利下げも実施できるようになるのか、などを注視する必要があります。