このページでは、1970年代から1980年代初頭のスタグフレーション(物価上昇と景気後退の併存)と消費者の予想インフレ率を見ています。
【左】では、1970年代からの米国のスタグフレーション期の物価や経済、金融市場の動きを示しています。例えば1973年の第1次石油危機後は、【オレンジ色】のインフレ率が急上昇していく中で、【青色】の失業率も低下から上昇に転じ、景気後退に入りました。当時の高インフレを伴う景気後退期の金融市場の特徴は、株安と長期金利の上昇(=債券価格は下落)が併存したという点です。景気後退期は通常、株価が下がっても金利低下で債券価格は上昇するため、株式と債券の分散投資が有効とされますが、当時はこの分散効果が弱まったという点で資産運用が難しい時期だったと言えます。
次に、足元が当時のようなスタグフレーション期に入りつつあるのかを考えてみましょう。確かに最近はインフレ率が急上昇しているため、スタグフレーションへの警戒感も高まっていますが、当時と比べて中長期のインフレ期待が落ち着いている点は安心材料です。【右】では、米ミシガン大学の今年9月の消費者調査による消費者の予想インフレ率を示しています。【灰色】の「1年先」の予想インフレ率こそ4.7%まで上昇していますが、【緑色】の「5年先」の同指標は2.7%と概ね横ばいで、低水準に止まっています。
過去を振り返ると、人々の中長期的なインフレ期待・賃上げ要求・高インフレの悪循環が深刻だった1980年は、「1年先」のみならず「5年先」の予想インフレ率も10%程度まで上昇していますが、少なくとも現時点ではこのような状況に至っていません。