このページでは、米国の利上げと景気サイクルと株価を見ています。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ開始をうけて、その影響が気になる投資家も多いでしょう。1990年以降にFRBが利上げを開始、もしくは再開した局面は6回ありました。その前後半年間の世界株式のパフォーマンスをみると、6回中5回は上昇し、2015年12月の利上げ時のみ下落しました。(注:「灰色の網掛け部分」は利上げ開始前月までの半年間、「水色の網掛け部分」は利上げ開始月を含む半年間を示しています。)
5回の上昇局面と2015年12月の下落局面の違いの1つは、当時の景気動向です。通常、FRBが利上げに踏み切る局面は、米国や世界の景気が堅調であることが多く、これが金融引き締め不安を跳ね返して株価が上昇したのが5回のパターンでした。一方、2015年12月前後は、中国不安(チャイナ・ショック)や原油価格の急落などで、世界景気が“本格的に”減速していた中での利上げ開始となったため、株価は軟調でした。
以上の過去のデータを考慮すれば、「今年はFRBが利上げをしても株価は上がる」とも「利上げをするから株価は下がる」とも言い切れません。結局のところ株式投資にとって重要なのは景気動向であり、景気不安がなければ利上げに対する過度な懸念は不要と考えます。一方、グローバル製造業PMIが急低下するなど景気が“本格的に”減速し、そんな中でも高インフレが収まらず、利上げをやめられないような場合は要注意です。
足元の世界景気はまだ強く、米国の高インフレは落ち着くとみていますが、PMIなどが急低下しないか、インフレが予想通り鈍化するかの定点観測が重要です。
【補足】FRBが保有資産を縮小する、量的引き締め(QT)が株式市場に与える影響は?
前回のQTは、2017年10月から2019年7月まで実施されました。QTの開始前や開始後しばらくは、世界景気がまだ強かったため株価も底堅く推移しましたが、米中貿易戦争などの影響もあり世界景気が“本格的に”減速した2018年10-12月期には、QTが続く中で株価が大きく下落しました。
上記でまとめた利上げと株価動向の見方と同様に、QTでも世界景気が強ければ過度な懸念は不要な一方、世界景気の悪化懸念と金融引き締めの「ダブルパンチ」の状況が生じないかを注視する必要があると考えます。