このページでは、前回の米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)と利上げを見ています。
昨年9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融緩和の出口が意識されました。今後の展開を考えるにあたり、前回、FRBが量的緩和のテーパリングや利上げに向かった際の景気や市場を振り返ってみましょう。
出発点は2013年です。5月以降はテーパリング懸念で【灰色】の米国の長期金利が急上昇しましたが、【紫色】のグローバル製造業PMIを見てもわかる通り、当時の世界景気は加速基調で力強かったため、この年の世界株式は大幅に上昇しました(→【緑色】の線や棒グラフを参照)。
翌2014年は、1月から実際にテーパリングが始まると、ちょうどその頃から世界景気も減速期に入りました。その結果、同年の世界株式のリターンは景気が加速した2013年と比べれば冴えませんでしたが、プラスは確保しました。
しかし、2015年に入ると世界株式は下落しました。当時は世界景気の減速が“本格化”し、特に中国への懸念が強まりましたが、そのような中でもFRBが利上げを模索したことがリスクオフに繋がりました(→【青色】の政策金利を参照。同年12月に利上げ)。
以上の歴史を踏まえれば、今後は「景気減速の“本格化”とFRBの利上げが重なる局面」に注意が必要です。この「2015年の再来」があるかどうかわかりませんが、仮にあるとしても、現時点では少し先のことかもしれません。
【補足】 2015年はリスクオフだったが、2016年や2017年には世界株式が復調。背景は?
2016年は、1月の原油価格急落や6月の英国の欧州連合(EU)離脱などを受け、FRBが暫く利上げを停止しました。このような環境下で世界景気が加速基調に転じたこともあり、同年に株価は持ち直しました。その後、FRBは2016年12月に利上げを再開し、翌年も利上げを続けました。しかし、その頃には景気加速やトランプ前政権の減税期待が続いており、企業業績も堅調だったことから、2017年の株価は大幅に続伸しました。つまり投資家は、景気が強いうちはFRBの金融引き締めをさほど懸念しませんでした。