このページでは、米国の景気後退期に投資を始めた場合のパフォーマンスを見ています。
Guide to the Marketsの42ページでは、ISM指数の底打ちなどを参考にする投資の例を挙げましたが、このような「株価の底値圏を探る投資」の難易度は非常に高く、現実的には実践することが困難かもしれません。この点も踏まえると、あまり難しく考えすぎず、(景気後退入りを認めるような各種報道やGuide to the Marketsの5ページで紹介したサーム・ルールなどを参考に)既に景気後退入りした可能性が高いと考えられる時点から、長期目線で積立投資を開始するのも一案です。このように考える理由として、当ページでは過去のデータを2点紹介します。①米国の景気後退期と景気拡大期にS&P 500に投資を開始した場合の「平均リターン」を比較すると、3ヵ月など短期のリターンは流石に景気拡大期の方が高い一方、1年以上などの中長期でみれば、むしろ景気後退期に投資を始めた場合のリターンの方が高かったことがわかります。これは、景気後退期は長い目で見た場合の安値圏で投資ができ、その後の景気拡大初期にかけての大幅反発なども享受できているケースが多いことを表していると考えられます。②続いて、景気後退/拡大期にS&P 500への投資を始めた場合に「リターンがプラスだった割合」をみると、やはり3・6ヵ月という短期では特に景気後退初期の株安の影響もあり、景気後退期の方がプラスの割合が低くなっています。但し、1年以上の中長期でみれば、むしろ景気後退期に投資をしたほうがプラスの割合が高くなっています。
【補足】景気後退入りしたら、「長期目線の投資開始」に加えて「時間分散の活用」もお忘れなく。
上記でまとめた過去のデータを踏まえると、例えば老後に向けた資産形成のために中長期で投資をする場合は「景気拡大期よりも、むしろ後退期の方が投資の良い機会かもしれない」と捉えることも可能でしょう。改めて【右】の景気後退期から5年間投資した場合にリターンがプラスだった割合を見ると、92%とかなり高い確率で景気拡大期の82%も上回っています。とはいえ100%ではなく、景気後退期からの長期投資でも、投資タイミングがよほど悪ければ厳しいリターンになることも踏まえれば、(特に株価がまだ「底値圏」から遠い可能性がある後退初期は)一括投資は避け、景気後退期中の時間分散を検討したいところです。