このページでは、米国の長短金利逆転後の金融市場と、景気の動向を見ています。
今年の3月には、米国国債の2年債利回りが10年債利回りを上回る長短金利の逆転が起きました。これは景気後退を示すサインとされますが、下記2つの注意点があります。①【右上】の1998年や2005年のように、長短金利の逆転が起きても景気後退が来なかった例があります。また、米連邦準備制度理事会(FRB)や一部の投資家が注目する「3ヵ月物の短期国債利回りと18ヵ月後の3カ月物の先物金利の差」や「3ヵ月物と10年物の金利差」などは、利上げが初期段階の足元ではまだ逆転していません。加えて、同じく景気後退のサインと捉えられる「失業率の反転上昇」が近いうちに起きるリスクも、現時点では限定的でしょう。②【左下】が示しているように、過去に「2年物と10年物の金利差」が逆転し、実際に景気後退が訪れた場合でも、逆転後すぐに株価のピークが来なかったケースもあります。【右下】では、米国の長短金利が逆転してから1年間の米国株式と米国国債のリターンを米ドル・ベースで示していますが、結果的に、長短金利が逆転してから1年間の米国株式のリターンをみると、6回中4回はプラスとなっていたほか、米国国債との分散投資をしていれば、2回の株安のケースでも深刻な資産の目減りは回避できた可能性があります。
投資家は、足元の「中期的な」景気後退リスクの高まりを軽視せず、以前と比べて備えを強化するべきでしょう。しかし上記2点を踏まえれば、過度な悲観に陥り今すぐ投資をやめるなどの極端な行動をとるのではなく、対策を強化した分散投資を検討したいところです。