このページでは、前ページに続き、景気の3年サイクルの上昇と、株式市場の動きを見ています。前ページでは、グローバル製造業購買担当者景気指数(PMI)が上昇基調となる局面で、株価も上昇基調を維持する傾向があることを確認しました。ここではその原動力について確認してみましょう。【右】では、過去7回のPMIの上昇局面における株高の原動力を見ています。株価は、「1株当たり利益(EPS)×株価収益率(PER)」で計算できるため、この2要因で分解しています。ここからわかることは、次の2点です。①株高は、主に予想EPS【薄紫色】の上昇に依ることが多く、「業績相場」になっていたと言えます。また、日米株式で比較すると、企業業績が世界景気に左右されやすい日本株式の方が業績変化率も高くなる傾向がありました。②一方、予想PER【オレンジ色】の変化率には明確な傾向がありません。とはいえ、2002年の局面②を除いて、予想PERの低下が予想EPSの上昇を「台無し」にするほど下がることはなく、それ故に株価は概ね上昇しています。なお、局面②は、企業業績見通しは改善したものの、2001年12月の米エンロンの不正会計事件で企業会計への不信が強まったことなどから投資家心理が悪化し、予想PERが大きく低下したと考えられます。
【補足】 PERは「バリュエーション」であり、「投資家の株式の将来性に対する漠然とした期待(投資家心理)を表す指標」でもある?
PERは、株価をEPSで割ったものであり、株価が割高か割安かを測る方法の一つとして注目されます。ただし、別の見方をすれば、PERとは「(例えば12ヵ月先の)EPSの何倍の株価までなら買えるか」という、ざっくりした「投資家の強気度」を表す指標であると捉えることも可能でしょう。景気が強まる局面で株式への期待や投資家心理が急速に悪化しにくいことを考慮すれば、過去にグローバル製造業PMIが上向く局面で、予想PERが予想EPSを「台無し」にするほど下がるケースが少なかったこともうなずけます。